第19話 結果と、可愛さ以外の何か


「ある程度可愛かったよ、ビビちゃん」


 冬服の上にコートを羽織る生徒が大勢を占めた時期。

 私もまた、学校から帰り、コートを本棚の上段に乗せた。

 パソコンの画面に映っているコンテストの結果を見ている。


 VIVIイラストコンテスト。

 グランプリを取ったイラストは、可愛らしく、作品中での描写であるビビッドな髪色であり、そして見ているこちらも幸せになれるような、魅力があった。

 確かに可愛い女の子で、私が大好きなもので―――そして、私が描いた子では、なかった。

 私が描いたビビちゃんでは、無かったのだ。

 選ばれたのは。


「―――ぇな」


 俯いた私が口にしてから気づいた。

 あいつのが―――移ったのだろうか、最近会わなかったけれど。


 うん、悔しいよ。

 無いよ、こんなの。

 無いですよ。


 でも、結果については満足している。

 ああ―――満足ではなく、納得。


 高校一年生の私が、初陣でいきなり一番になれるなんていうハナシはないだろう。

 そんなの嘘だし―――そして、私が心の底から、思っていたのだ。

 私が描いたイラストは、ある程度可愛い、と。


「『ある程度可愛い』女の子がグランプリを取れるわけ、ないよね………」


 私の初めてのイラストコンテストは、そうやって終わりを告げた。

 そして第一回が終わったし、そして終わりは始まりでもある。


 不思議と清々しい気持ちだ。

 やりきったし手を抜かなかったという気持ち。

 スポーツマンシップに目覚めたのだろうか。

 目覚めたなら目覚めたで、いいけれど。


 私のフォロワーには、感謝の気持ちを伝えた。

 応援してくれたことは確かだから。

 みんなは優しくて。

 私の描いたものも可愛かった、良かったよと、言ってくれた。


「―――絵を描いたら、喜んでくれるんだ」


 ああ。

 あああ―――そういえば、そうなのか。

 私が、一人で絵を描いて、描き続けて―――ひとりぼっちで。

 でも喜んでくれる人って、実はたくさんいるんだ。

 いるみたい。

 不思議だな。





 それからは、いつものように学校生活に戻った。

 もちろん、コンビニにも立ち寄るのだ。

 コンビニに向かう足どりは、以前よりも軽やかだった―――かもしれない。

 なんならスキップしてた。


 コンテストでは、負けたけど。

 それでも上出来だった。

 戦った―――よね。

 絵が描けたこともそうだけれど、私の中の、何かが変わったことは確かだった。

 ただ親に反抗するだけ、友達に嫉妬しているだけの人間から、私は抜け出せたのだ。

 間違いなく変わった。


 それは、ビビちゃんのおかげだよ。

 可愛さ以外の何かを彼女からもらったんだ。

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