第17話 マンガ談義しているだけではなくなった 2

【marumaru】「もちもちさん、『VIVIビビコンテスト』参加されるのですね!頑張ってください」


【Ai】「可愛い!もちもちさん、オリキャラ描かれるのは珍しいですね」


【☆みな☆】「Good!!」


「みんな………」


 私は画面の前で、狼狽えてしまった。

 数少ないネット上の友人。

 フォロワーのうちの、コメントを書いてくれる何人かの子。

 応援してくれる人がいる。

 応援してくれる人もいる―――いよいよ私のジェットコースターは有頂天といったところだ。

 頭の中に、二次関数グラフに似ている急勾配きゅうこうばいな坂道を想像する。


【もちもち】「ありがと!き、期待しないでね!初めてだから!全然、ダメだから!」


 打ち込み終わってから、やはりこの発言はいけないか―――と思い悩む。

 自分の絵に、まだ自信が持てないし、実際、目指す地点には、まだいない。

 目指す地点、目指す可愛さ。


 コンテストに参加するからには、もっと自信満々に、どっしり構えたほうがいいのだろうか。

 どっしりはしないけどね。

 体重ないからね。

 私の体型は普通だし、私が描く女の子はすべて、体重がゼロ。

 存在しないのだよ。


【Ai】「でも、もちもちさんはスゴイな、私なんか、コンテストってちょっと怖いもん」


【☆みな☆】「わたしもそー思うー、だってプロ的な人だっているじゃん?ここ―――」


 私以外の子は、みんな仲良くしてもらって、いい人たちだ。

 けれど私のようにコンテストには参加していない。

 慎ましやか、ひかえめな性格のようだ―――確かに、私だってそうだった。


【もちもち】「私だってそうだよ、怖いっていう気持ちはあるもん」


【Ai】「怖いけど、描いているって、フシギ。もちもちさんは描けるの―――」


 描こうとしているんだってば。

 絶対に上手くいくとは思えないけれど、「皆もやろうよ」、と言いたかったけれど、自分でも疑問が湧いたのだった。

 彼女らの言うように、私は何故コンテストに出る事になったのだろう。

 好きなマンガもイラストというわけではなく、慣れない、オリジナルキャラのようなもの―――を描くという事をしてまで。


 私は―――今、一生懸命やっている。

 何故だろう―――怖さというか、違うという気持ちはあるのに。

 何故コンテストに出た、エントリーしたのだろうか。

 初めての事だった。


【もちもち】「ちょっとは上手くなってきたからだと思うよ?」


 そうやってチャットを返すと、一応彼女らは納得をしたようだった。

 けれど、私の発言には嘘があった。

 私の画力は足りていない―――ビビちゃんは、まだまだ未完成だし、私よりも上手い人は、このサイトにいる、いるんだ。

 そりゃあネットだもの、全国、もしかしたら世界中から来ているよ。

 上には上がいるという言葉は真実だ―――知っている、コンテストに参加してから、さらにそれは痛感している。


 私の発言は、嘘―――高校生が強がっているだけ。

 でも―――じゃあ発言が嘘だとして、真実は?


「私は、今、前向きにやっている………」


 私は、嘘はつかなかった―――けれど、真実を仲間に言わなかった。

 否、言えなかった―――真実がわからなかった。

 心の底から、わからない。

 私は何故コンテストに参加したのか―――その理由は?

 出しゃばっているだけ?

 単なるけ?


 例えば親や友人に、参加を促された、誘われたなどという事はないのに。

 目上の人に、大人たちに、クラスのみんなに―――出ろとは―――言われてないのに。

 多分、誰かの役に立つかというのではない。

 クラスの誰かのためとかじゃあ、無い。

 でも、今はなんだか―――やめたくない。

 もっとマンガを好きになりたい。

 マンガも、イラストも。

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