第11話 蒸しパン星人 3
中学校の頃の私は、部活動に一生懸命だった。
青春というものをした。
少なくとも手は抜いていなかった気がする。
ただ、高校生になってからは、こうしてマンガの話をしている。
部活動には所属していない。
楽しい。
それで、困ることは何もない。
―――
「蒸しパン星人はね、蒸しパン星からやって来たんだよ」
「うん…………うん」
「蒸しパンを主食として生きる、心優しい種族で、青い星、地球にも蒸しパンを広めるためにやってきたの、フランスパンみたいなカタチのUFOに乗って
「う~~ん」
「口癖は『ボクの頬を食べなよ』で、自分のほっぺたを千切って、蒸しパンをプレゼントするの」
「う―――ん………」
「ねぇ、聞いてる?」
「ちょっと待って、今いいとこだから………ああー、まあ、まあ」
週刊少年跳躍を眺めているコンビニおとこは、私が考えたキャラにはあまり興味を持たず、
熱心らしい。
私の顔色などつゆ知らず、彼はマンガを読み終わって、相も変わらず難しい表情をしていた。
なんだか大仏みたい。
うん?
違うなぁ―――大仏はもうちょっと穏やかな表情だ。
コンビニおとこは金剛力士像みたい。
じゃあない、金剛力士像ってもっとパワフルなやつか。
銅像に詳しくない系の女子である私は、うまいたとえが出てこない。
「なるほどそうなるか………!」
「そんなに今週面白かった?」
「ギャグが戻って来たな。やっぱり『やりすぎた
最近の『槍使い 群具煮』は、ライバルに打ち勝つために修行をした結果、主人公が槍の心の声を聞くという特殊能力を得た。
武器と一体になり神レベルのチームワークを得ることにより、飛躍的に戦闘力が向上したということだ。
「敵チームとか組織のアジトに乗り込んでからもマジメなシーンが一切ない。しっかりふざけ通している点が高評価だ」
なんだか評論家口調になっているコンビニおとこが、おかしくて微笑ましい。
高評価だ、と来たか。
「―――あと蒸しパン星人」
彼は唐突に話題を変えたというか、戻した。
私の心の中に住んでいる蒸しパン星人に物申すようだ。
「蒸しパン星人はダメだな、その流れだと単なるパクリでしかない………。蒸しパンを使って世界征服するために食品工場にもぐりこみ、蒸しパンの販売本数を通常の三倍にするなど、それくらいはやらないと」
彼は言うが、それこそどこかのアニメのパクリではないだろうか。
販売本数を三倍か。
「蒸しパンって『本』なの、単位」
「うん?ミスった」
「………蒸しパンを、工場で、なんて言うか―――美味しい新製品を作ればいいんじゃない、蒸しパンの」
「う―――ん、蒸しパン星人は地球にやってきて気に入らない人間の口に蒸しパンをねじ込む、という悪行をおこなっているんだ」
「そうなの?」
「それで正義の『
「何とかパンマンに………!?」
いつの間にか悪役にされてしまった蒸しパン星人。
私のイメージではゆるキャラのように可愛い子なんだけど。
………まだ一回も描いてないなー。
描いてみようかな。
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