第7話



ガシャン!!!


大きな音を立てて、テーブルの上にカップが落ちる。


角砂糖を乗せたソーサーに当たり、角砂糖たちがバラバラとテーブルの上に散らばった。


ヒロが、散らばった角砂糖たちの横に、一口だけ飲んだ自分のカップをコトン。と置いた。


「.........な.....に、を........... !」


彼の唇の色がどんどん消えてゆく。

唇の横からは白い泡が噴出している。


「.....な、に........を...」


彼は喉を掻きむしる。熱いのだろうか。冷たいのだろうか。焼けるのだろうか。凍えるのだろうか。


「...........この中に、一つだけ」


ヒロの指が、転がった角砂糖を摘んだ。


「毒が、入っていたんだよ」


黒のスーツ。

アイボリーのシャツ。


足を組み、角砂糖を摘む左手を太腿に乗せたまま、ヒロの表情は何も変わらない。


「栞とずっと昔から......ガキの頃から決めていたことがあるんだ」


ヒロが角砂糖をそっとテーブルに置く。


「俺達が間違っていると言われるなら、許されないと言われるなら」


彼の呻き声がだんだん、小さくなってゆく。


「そのジャッジは、神様。ってやつにしてもらおうって」


私はまた窓を見る。

外の世界はきっと真っ白で明るいのでしょうね。


「俺が死ぬかもしれない」


「栞が死ぬかもしれない」


ヒロがすう、と大きく息を吐いた。


「俺らを罪だと言う誰か、が。..........死ぬかもしれない」


彼。はもう、動かなくなった。


「その誰か、はお前じゃなければいいな。って思ってたよ」


ヒロは真っ白な顔で、幼馴染で親友だった彼の死に顔に、小さく、小さく、呟いた。






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