第6話
「.....お前ら、............身体の関係も、あんの?」
優しい穏やかな人だった。
この人の目を今、これほど血走ったものにしているのが愛だと言うなら私、真っ当な愛なんていらない。
「あるよ」
ヒロはゆっくりと、でもハッキリと、彼の質問に答えた。
彼の首筋が赤くなる。そして青くなる。
「.....気持ち悪い.........お前ら.....狂ってるよ」
吐き捨てるように言われた言葉にも、ヒロは顔色一つ変えなかった。
「......一つだけ聞きたいんだけど」
ヒロがあまり口を開けず、言葉だけを落とす。
ヒロの指が、私の指に絡まる。
握り返した私の指を、ヒロの指を、彼は片頬を顰めて見た。
「.....俺らのことを、誰にも言わず、そっとしておいて欲しい。と頼んだら」
「無理だな」
ヒロの声を遮るように、彼が吐き捨てる。
「ふざけんなよ、気持ち悪い。こんなこと許されるわけねぇだろうが」
正義感の強い、優しい、穏やかな......人だと信じていたかった。
なんて。彼の愛に応えることも、その理由も告げることなく去った私が願うことじゃ、ないのでしょうね。
「終わりだよ!終わり!お前らのその気色悪い関係は終わりだよ!」
彼の顔色は赤くなり、青くなり、罵声を繰り返す。
これが、きっと、世の中の、世間の、私達への刃なのでしょう。
「.....落ち着いて」
私の声に、彼はハッと顔色を変えた。
気まずそうに私から目を逸らす。
「紅茶、飲もう?」
場違いな程落ち着いた私の言葉に、彼は少し動揺した。
私は隣のヒロを見る。
そしてゆっくりと、カップを持ち、唇を付ける。
ヒロも私を見つめ、そしてカップを持ち、ゆっくりと紅茶を、口に含んだ。
......彼も、はぁ。と大きなため息をついて、乱暴にカップを持ち、ゴクリと紅茶を飲んだ。
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