第5話


カップの中のお砂糖が溶けるのがまるで合図だったみたいに、彼が口を開いた。


「やっぱりおかしいよ、お前ら........」


ヒロが、ふぅ。と薄く息を吐く。


「お前ら、........血の繋がった兄妹だろ?おかしいよ」


ダークブラウンの窓枠の向こうにチラホラと舞う羽根が見える。

あ、また天使が殺された。


優しい記憶を思い出す。

幼馴染だった彼が私に愛を告白してくれたのは何年前だっただろう。


ありがとう。ごめんね。だけを告げた。


他に好きなやつ、いるの?と聞かれて、私は「うん」と答えた。


........あなたもよく知ってる人だよ、とは言わなかった。


彼の「失恋」を、幼馴染で親友だったヒロが、どう聞いてどう慰めたかは知らない。


私達はただ祈ってた。


どうかどうか、この愛が誰にも知られませんように。


どうかどうか、この愛だけを抱えて二人で生きていけますように。


ただそれだけを願い、私達を疑い出した彼からも地元からも離れて、あぁ、私達は舞台に立たず、観客席にも座らず、こっそりとひっそりと舞台袖で、.......手を繋ぎ、生きてきたのに。


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