第3話
遠くで、ガチャと玄関の鍵が開く音がした。
彼がはっと、表情を強ばらせたのが分かった。
そしてゴク、と大きく唾を飲み込み、覚悟を決めた顔をしてリビングのドアを見つめる。
玄関の鍵が閉まる音がして、数秒だろうか。
数秒な気もしたし、長い長い時間な気もした。
リビングの白いドアが開いて帰ってきた人は、彼の姿をテーブルに見つけても表情一つ変えなかった。
玄関に置いてある靴で全てを察したのかもしれないし、いつか来るであろう今日を覚悟して生きてきた私達にとって、この白いドアは、リハーサルを繰り返していた劇の本番の舞台の幕だったのかもしれない。
外は相当寒いのだろう、耳の先が少しだけ赤く、黒髪が少し濡れていた。
「...........
座ったまま彼は、掠れた声で、かつての親友の名前を呼んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます