第2話


暗い部屋に窓から仄かな光が差し込んだ。


シンプルに息をしていたい。

生き急いだあのころの時間を取り戻せたらな、とたまに思うことがある。


私たちの人生は選択の連続で、小さなことでも大きなことでも必ず選択が強いられる。

サヨナラだけの人生の中で何を捨て、断ち切り、何を拾い、繋ぎ止めるのか。


全ては私次第の結果で構成されてゆく。

この道でよかったんだ、と不安になって振り返る時、私はいつも自然と選ばなかった道の方を見つめてしまう。


静けさに慣れた耳は雪の降り積もる音までも聴き取れそうなくらい、私も彼も、カップを持ったまま静寂の中にいる。


沈黙を破ったのは、彼だった。


「.......許されることじゃない」


彼が顔をあげて私を見た。


真っ直ぐな瞳。真っ直ぐな言葉。

その視線も、その言葉も、間違っていないことを私は知っている。


知っているのだけれど。


「おかしいよ」


真っ直ぐな言葉が私の胸に突き刺さると信じて彼は言葉を紡いでゆく。


私は何も言わない。

静寂がまた二人を包み込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る