霊動甲冑戦記「ポイント・マテリアル」

早起き三文

第一章 亡国の王子

第0話「黄金の街道」

 金に輝く落ち葉が舞う街道の真ん中で、銀色に輝く巨大甲冑が、対峙する金色の巨人の腕を軽く叩く。


「ラッカソウ、使うなんて卑怯だぞ?」

「使っちゃいけない決まりでも、ありました?」

「いや、ないけどさ……」


 淡い緑色を基調とした金髪を持つ少女の言葉に、同じく金の髪を持つ青年はその口を尖らせながら苦く笑う。


「ベオ様、はい」

「サンキュ!!」


 メイド服を基本系とした整備服にその身を包んだ少女からジュースをもらうと、ベオと呼ばれた青年は自身の乗っていた銀色の巨人の脚をその腕でなでた。


「アウローラ様も、はい」

「良いエルフは?」

「死んだエルフ!!」


 この上なく物騒な台詞を口にするこの二人の娘にはすでに慣れているベオは遠くから馬に乗ってやってくる、まさしくその「エルフ」の姿をみて、その頬を綻ばせる。


「アルデシア本国からの伝達であるよ!!」


 そのエルフの声に響き、舞う黄金の葉達。


「ベオ王子、および黄金の巨人はアルデシア本国トラキアヘ帰還せよと」

「何をするつもりなのやら……」


 メイド、近侍の女性が愚痴るようにその言葉を吐き、ジュースが入ったバスケットを重そうに持ち上げた。


「よっ、と……」

「あ、ありがとうございます、ベオ様……」


 軽く頬を染める彼女を横目に見詰めながら、緑金の髪をした少女は自身の巨人兵の頭の部分、ちょうど獅子を模しているその頭部を見上げながら呟く。


「ねえ、ベオさん」

「なんだい、アウローラ?」

「この金色の巨人さん」


 コン、コン……


 その硬質でありながらも、どこか弾性を感じさせるその不可思議な材質の装甲板、それを叩きながら、少女はその可憐な面を傾げてみせる。


「いったい、どこで手にいれたのですか?」

「そりゃあ、なあ……」

「貴方には聞いてません、エルフの元王子さま」

「こりゃ、まいった」


 己の額に手をあてながら、エルフの元王子と呼ばれた青年は、ベオに助けを求めるようにその視線を向けた。


「そうか、言ってなかったか」

「しっかりして下さい、ベオ様」

「悪い悪い」


 たおやかな唇を尖らせるメイドの言葉にはあまり悪い風には感じていないように見える彼は、それでも自分の頭へその手を置き、記憶を思い浮かべようと試みる。


 ジャ……


 黄色、金色の葉の波が辺りを輝かせ、周囲を金の海へと変えるなか、ベオはその口を開いた。


「あれは、三年前のあの時辺りからだな……」

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