第3章 ネガティブ半島・前編 (3)

・・・♪・・・


 ゲートが開く。大きな音を立てて。基地の入り口と似たようなゲートだった。もうすでに何度もここから出かけているが、今だにそれが開くものだとは信じられない。しかし、とにかく、ゲートが開いた。

 その先に広がっている世界を今のわたしは知っている。

 潮の香り、光の鱗が並ぶ海。わたし達の戦場。

 当然、この拡大外殻シェルフリッパーの中にあって、それらは二次的な情報にすぎない。

『コントロールを赤に譲渡します』

 そんな声がわたしの頭に直に響く。実際に聞いているのは、わたしの耳ではない。今のわたしを包んでいるこの固い外殻に備えつけられた感覚器が、聞いている。管制室からの通信は、わたしを包む外殻を介して、わたしの意識に流れ込んでくるのだ。

 今や、わたしとエグゾゼは一心同体だ。わたしはエグゾゼであり、エグゾゼはわたしである。いや、より正確に言えば、これはわたしの新しい身体なのだ。だから明確な区別などできない。

 わたしはグレゴール・ザムザを思い出す。朝起きて、毒虫になっていた彼。わたしも似たようなものだ。気がつけば、トビウオになっていた。

 ただ彼とわたしで異なっているのは、彼はそのまま死んだが、わたしは元の姿に戻れるという点だ。そう、これは変身などではない、ただ着替えただけである。

 そして、与えられたドレスコードに従って、わたしは、これから戦場に出なければならない。

「OK、アイ・ハブ・コントロール」

 わたしは言う。口を利くのは、勿論エグゾゼだ。わたしを取り囲む機械が、わたしの意思を適切な言語に翻訳する。拡大された身体。それが新しいわたしだ。

 エグゾゼを介して、発進シークエンスを呼び出す。わたしを海に打ち出すための電磁レールを起動、その小さなハミングを聞く。わたしの身体に、エネルギーの高まるのを感じる。期待と興奮の入り混じった気分。早く、飛び出したい。海が甘く涼やかにわたしを待っている!

『進路はクリア、天候は晴れ。あの子の加護のあらんことを』

『ありがとう』とわたしは、自分自身に答える。『バレッド・ワン、エグゾゼ、発進します!』

 エグゾゼわたしは、電磁レールを掴んでいた爪を離す。エネルギーは解き放たれる。わたしの身体は与えられた速度でもって、線路から撃ち出された、弾丸のように。

 空に出る。あるいは海。同じくらい真っ青なその色に、わたしの中から喜びが沸き上がる。ふと自重で身体が沈み、お腹の中が浮ついたが、わたしは慌てない。やるべきことはちゃんとわかっている。

 浮遊機構を始動、スラスタに点火、速度を上げる。浮きも沈みもしない程度の最低速度。トビウオらしく姿勢を正して、わたしは海面を滑走する。解放された気分。

 この身体の使い方はわかっている。わたしは空を飛ぶことができる。わたしは空を飛んでいる。もっと自由に飛ぶこともできる。

 喜びがぐっと沸いてきた。抑え込むことなんて勿体無くてできなかった。わたしは声を上げた。それはこの外殻に翻訳されて、甲高い口笛みたいな音になる。

 感覚器が水飛沫の感覚を伝えてきていた。速度のせいで風は冷たく、しかしそれが心地よい。日差しは強い。わたしは身体を捻って、腹を空に向けて少し飛ぶ。背びれが水を切るのが楽しかった。

『エグゾゼ、調子はどうだい』と通信が入る。

 左を見ると、僚機が飛んでいた。オルカのようなシルエット。流線型のボディと、青に描かれた白いライン。身体の両脇、羽の下には、大きな瘤が着いている。わたし達はこの拡大外殻をレプンと呼んでいた。

 彼女は青い声で話す。

 拡大外殻シェルフリッパーを介して、わたし達の感覚は着色される。

 これは通信の便宜を図るためだ。

 人間のときと違って、面と向かって話すことがいつもできるわけじゃない。ここは戦場であり、距離のある通信をすることもある。そしてなにより、判別速度が大事になってくる。

 そのために、機械が拡大外殻間の通信を翻訳する際に、脳の色を司る部分を刺激することで、声に色を着ける。

 これによってわたし達は互いを判別することができた。

 ちなみに、エグゾゼわたしの声は赤く聞こえるらしい。血のような赤色。そしてそれがわたしに割り振られた、役の名前だった。

 この海は、劇場だ。

 わたし達は、互いのこの名前が一時的なものであることを知っている。赤、青、緑、橙、そして前回の戦闘で海に沈んだ浅葱色と桃色。わたし達は等しく同じ名前を持つ女の子だ。

 けれども、たとえこの拡大外殻を脱いだところで、色がわたし達の身体から抜けることはない。染み込んでくるのだ。機械から、肉体に。自分たちの色が。

 基地で生活していても、わたし達は互いの声を着色済みのものとして聞くし、他のわたしに拠れば、キスの味も変わるようだ。共有される記憶は、その典拠を明確i

する。一人のわたしの中に、複数のわたしが存在できるということだ。

 このデイファレンスは、わたし達に希望を与えてくれる。色彩を得たわたし達は、まるで他人のようだ。それは、わたし達に有効な物語を紡ぐことを、その可能性を許してくれる。

 この世界は、閉じている。わたし達のみによって運営される劇場は、多重人格的な妄想に過ぎないかもしれない。わかっている。しかし、これは、あの子の思い出だけを動力源とするこの宇宙船組織の中で、新しい人生を予感させてくれるのだ。

 ここの部隊で過ごす内、わたしは少しの罪悪感とそれ以上の安らぎを見いだしていた。小さな社会が生きていた。

 わたしは考える。この宇宙船にいる全てのわたし達が、それぞれに色彩を持つことができたなら、と。方法はわからない。拡大外殻の全長は二メートルほどあり、また製造するにも時間がかかる。先日の戦闘で失われた三機の内、新造されたのはわたしの着るエグゾゼだけだ。

 この計画は、甘い。

 劇場とわたしは言ったが、それが劇中劇的なものであることを、わたしはちゃんとわかっている。扉が開かれてしまえば、演目は輝きを失って、わたし達は現実と向き合わなければならなくなるのだ。わたし達が、どこまでいっても同じ人間であり、父と母によって与えられた名前からは逃げられないということに。

『――エグゾゼ』と青色の声がわたしを呼んだ。

『なに?』

『これは訓練じゃないんだよ』

『わかってる』

 とわたしは答える。

 そう、これは実戦だ。これからわたし達は戦争をする。ネガティブ半島からやってくる災厄から、わたし達の街を守るために。わたし達の〈猶予期間モラトリアム〉を維持するために。それが海岸警備隊の仕事だ。わたし達の敗北は、この宇宙船全体の死を意味する。

 わたし達の隣に、緑色のイッカク=ナーヴァルと、橙色のエイ=レイエが並んだ。

 レプンの青色の声が二人を呼び、二人はそれぞれ緑色と橙色の声でそれに応える。わたしの聴覚を通じて、視界に三つの色が混じる。海を見ている拡大外殻の視野の端が、スポットライトに追いやられた闇のように、その輪郭を薄く染められる。ただし、色彩は豊かだ。

『さ、みんな。生きて帰ろう』

 と、レプンが励ますように言った。

 わたし達はまず沈黙を選んだ。そして、この海の上で死んだわたし達に想いを馳せた。失われた拡大外殻は、もう戻って来ない。そしてそれを着ていたわたし達の分身も。

 海の上で死ぬとは、そういうことだった。永遠のサイクルから外れること。沈んでしまったわたし達の身体は、引き揚げられず放っておかれる。死体回収用のロボットは、この深い海を潜ることができないのだ。

 それは、わたし達個人にとっては、絶対的な死を意味する。来世はない。未来方向にも劇場は閉じられている。

 隊列を組むわたし達は、つまり舞台の上で、仲間の死を悼むことができた。ここはそれが有効な意味を持つ場所だ。

 今回の戦闘は、弔い合戦としての性格もある。前回落とされた三人のわたしの内の一人――浅葱色のわたし――と、今横を飛ぶ緑色のわたしは恋仲にあった。それはあの街で行われるよりずっと真実だった関係だ。しかし、彼女は死んだ。最後の言葉は「あの子のこと、頼むね」だったそうだ。

 そう、この劇場は、一つの砦なのだ。あの子の思い出という篝火を受けて、銀幕の中を飛び回るわたし達は、やってくる敵意から観客を守る。思い出は、あの街の観客たちの中でこそ維持されるのだ。 

 わたし達は、前を見据える。そこにまだ敵影は見えない。しかし、やがて来ることは間違いなかった。

『こちらのレーダーで、敵機を捉えました』

 と声が聞こえて来る。白い声。それは管制室からのものだった。

『ディプレス・クラスタシアは一機、識別はクラブです』

 同時に、視界に矢印が表示された。エグゾゼがわたしの視覚情報に割り込んで、そう見せるのだ。わたしはその矢印に向けて意識を集中させる。望遠視界、起動。ぐっと視野が狭まって鋭いものになり、わたしにずっと遠くを見せる。

 海面を走る影があった。甲殻類。巨大な構造体。山のように見えるが、概ね蟹だった。大きなハサミを両脇に携え、迫って来ていた。海面を這うようにして進むその姿は少し滑稽だったが、それだけに、異様なものを伝えてくる。山の上の目がこちらを見た気がした。

『確認した』とレプンの青色の声が応えた。彼女がわたし達の頭脳だった。

『では、シェルフリッパーズは、敵の撃破を遂行してください』

 と白い声は言う。

『以下はレプンに指揮を任せます。ーーあの子の加護のあらんことを』

 わたし達は最後の言葉を唱和する。白い感覚が去った。

 視界の青色が濃くなった。

『いいか、みんな。敵は巨大だが、わたし達は別に不利じゃない。わたし達にはチームワークがある』

 凛とした青い声が耳元で響く。わたし達は、自分の着ている拡大外殻が正常に機能することを確認しながら、リーダーの言葉を聞いていた。

『奴は、機械から成る単一の身体しか持たないが、わたし達はネットワークだ。通信可能領域の許す限り、どこまでも大きくなれる。火力は奴の方が上だが、わたし達には機動力がある』

『象に対するスズメバチってわけだ』とナーヴァルが緑色の声で言った。

『金星、応答せよ』とレイエが、橙色の声にわざとノイズを混ぜて言った。

 それはあまり良いシャレじゃないな、とわたしは思った。元のタイトルは応答なし、と続く。しかし、訂正はしなかった。縁起でもない。

『エグゾゼは何かないのか?』と青色の声が、呆れたように尋ねてきた。調子をすっかり狂わされてしまったようだったが、初めてのことではないらしい。

『わたしは、きみ達と一緒に飛べて嬉しいよ。だから、また飛べたらいいなと思う』

 六分の四の色彩が、ふわりと弛緩した。わたしは、彼女たちが同じ想いであることを知る。それだけで十分だった。

『そういうことだ』青色の声。『――戦闘開始まで十秒。各自、自分の役割を果たせ。この色彩が、わたし達の武器だ』

『了解』

 とわたし達は応える。

『空に色彩を刻み込め。ーー散開!』

 劇場の幕が開く。

 客観視野が、わたし達が蕾の開くように散る様子を映し出した。それはわたしの脳裏に映る風景であり、拡大外殻が互いの位置情報から描出したものだ。

 レイエは速度を殺し、浮遊機構によって滞空する。エイの広いヒレを回転させて垂直に立て、尾の先を前方に向ける。彼女は狙撃を担当している。その姿は凧みたいだ。

 彼女を空に置き去りにして、わたし達はなおも蟹との距離を詰める。

 青色の声が、わたし達に共有される。

『レイエの発砲と同時に突撃、相手のコアを見つけ、破壊する』

『了解』とエグゾゼわたしとナーヴァルが声を揃えた。

 警告音。

 視野の一部が望遠モードに切り替わり、蟹を近くに見せる。

『蟹って歯のある生き物だっけ』ナーヴァルが言った。

『知らないよ。レプン?』

『検討結果、来た。共有する。レーザーサイロのようだ。威力不明』

『ビームが来るって理解でヨーソロー?』

『撃ってもいい?』

『エグゾゼ、どう思う』

『新人に訊くかなぁ――』

『赤色が聞こえなくて寂しいからね』

『まあわたしの速度ならどうにでもなるだろうし、牽制はやっといて損はないんじゃない』

『プラン変わらず、やれ、レイエ』

『オーライ。トリガー』

 橙色の感覚がわたし達を刺す。そしてその直後、わたし達の間を弾丸が抜けた。わたし達は更に加速する。生じたGは、即座に打ち消され、わたし達は塗り替えられた慣性の中で自由になる。

 慣性制御は、基本だ。

 と、蟹の口元に蓄えられた泡が、ちかりーーと一斉に煌めいた。

 わたしが意識するより早く、身体が勝手に反応した。エグゾゼの背面スラスタが火を噴き、わたしの身体は一メートルほど下方に叩き落とされた。

 それでも、避けきれなかった。背中が煮立つ感覚があった。痛みはない。ただ、エグゾゼがエラーを報告するだけだ。背中が融解し、小さな爆発が起こった。わたしは更に高度を落とす。墜落はしない。大丈夫。浮遊機構は生きている。

『あっぶなー』

 声を聞くところ、ナーヴァルは問題ないようだった。

『なんとかなるって言ったじゃん』

『避けれるとは言ってない!』

 左に旋回して、蟹から距離を取りながら、わたしは意識を

 エグゾゼの体自体は、蟹から離れるように飛んでいるが、その中にいるわたしの意識は蟹の方を向いていた。もちろん、これはあくまで錯覚に過ぎない。拡大外殻の全身に搭載されている、レーダーやカメラなどの感覚器の情報が、わたしにまるで幽体離脱して振り返っているような風に思わせているのだ。

 わたしが見たのは、空に引かれている白い縞模様だった。青く縁取られたその光は、エグゾゼの計測によると半kmは伸びているらしく、また全部で二十四本引かれているようだった。古いゴムをなおも引っ張るようにして、光条ビームは伸びていき、綻んでいく。光の小片が雪のように、海に降る。

『エグゾゼ、まだ飛べるね?』

 と青い声が確認する。

『Positive』エグゾゼは答えた。

『レイエ、着弾は』

『途中で蒸発しちゃった』

『第二射装填――』

『すでに済んでる』

『さすがわたし。撃て!』

 青い声がそう命じた時には、すでにレイエは撃っていた。それが許されるのだ。わたし達は全体で一つの個体だから。

 橙色の弾丸が、再び空を貫いた。空気の避ける音が、わたしの外殻をビリビリと震わせる。レイエの弾丸が蟹の眉間に直撃。金属の地層に漣が立った。

 蟹は少しだけ動きを止めた。

『手応えゼロ!』

『わたしのドリルなら』イッカク=ナーヴァルが言った。

『接近できる確証は』

『ないね。こいつ遅いから』

『ーーエグゾゼ、合流して。ナーヴァルは援護。ミソを掻き出してやる』

 レプンがエグゾゼに進路を伝え、わたしの身体はスラスタの火を強くする。わたしは失った高度をすぐに取り戻し、ハート型の軌道を描いて戻ってきたレプンと並んだ。

 わたし達は、麻痺している蟹の懐に潜り込んだ。さっと影が下りる。

 暗転。

 意識を引っ繰り返して、蟹の腹を見た。またしても意識と身体の捩じれている感覚があった。二つの姿勢が同時に実現している。仰向けと、うつ伏せの。

 あまりこの二重状態を続けていると、わたし達は自分の身体を忘れてしまう。それもまた一つの後遺症だった。しかし、拡大外殻を着るとは、そういうことだった。

 人間の身体のままで空を飛ぶことはできない。その為には、本来備わっていない新たな器官が必要なのだ。わたし達は、思い出の火を守るために、別の何かにならなければならなかった。わたし達が守るべき観客は、そういうファンタジーを求めているし、それはわたし達の願いでもあった。

 変身。

 永遠の生命を続けることは、どこかに歪を伴うのだ。少なくとも、今は、まだ。

『腹はどこだ?』

 とレプンが言う。青い声には心無しか同様の色が聞こえた。

 それはわたし達の知っている蟹ではなかった。わたし達の頭上を塞ぐ天井は、一面が滑らかで、蟹の腹に特有の模様がなかった。むしろそれは、丁寧にやすりをかけられた甲羅のように見えた。継ぎ目などどこにも見当たらなかった。

『どういうこと』

『どうしたのわたし!』

『両面とも甲羅みたいなんだ』とエグゾゼわたしはレプンの代わりに答える。

 青色は本格的に慌て始めていた。その感覚は速やかに部隊に共有される。波打つ色彩が、わたしの視界を惑わせた。わたしは軽い目眩と吐気を覚えたが、堪えることができた。わたしにとって、これは初めての戦闘なのだ。

 しかし、レプンをはじめとする僚機のわたしは違う。わたし達は、今までに何度も蟹と闘ってきていたのだ。その歴史が、今、引っ繰り返されていた。部隊は足下を信じられずにいた。浮遊機構がわたし達に与えるのは、暫定的な猶予であり、盤石な大地などでないことをわたし達は思い出した。レプンの進路に乱れが生じた。

 わたしは意識と身体のよりを戻した。

『レプン、ちゃんと加速して。一度外に戻ろう』

 声をかけながら、わたしは蟹の下から出ようとした。レプンは迷うように着いてきた。

 わたしには、どうするべきかわからなかった。

 自分で考えるべきだろうか? でもそれは許さないことだった。今のわたしは、もっと大きなわたしの一部であり、自由が許されるのは、限定的な仕事の中でのみだ。エグゾゼわたしの仕事。機関銃で牽制しつつ突撃し、両脇のブレードで対象を分割すること。接近戦。わたしはナイフを持つ右手だ。

 蟹の殺害ーーその大きな使命を遂行する為には、腹をこじ開け、心臓を刺さなければならない。

 しかしながら、わたし達はそもそも腹がどこか見失っていた。どうすれば良いのだ?

 頭の上で、蟹が動きを取り戻した。永い眠りから目覚めたように、身震いをした。

 わたし達の天井が、開いた。格子戸。それは、蟹の尾までずっと続いており、わたし達の進路は今レンズに覆われていた。背後で、きらりと光が生まれた。意識を反転させて、そちらを見た。青く縁取られた光の柱が海に立てられた。膨大な熱量に蒸発する海面から、蒸気が沸き立つ。

 柱は次々と海に落とされ、わたし達とに迫ってきた。

『しゃんとしろよわたし! きみが動かないで誰が指揮を取るんだ!』

 わたしはレプンに叫んだ。レプンはハッと自分を取り戻した。それはわたしの声がそうしたというよりも、彼女の着ている拡大外殻が自分を守るため彼女に促した覚醒だった。

『海へ!』

 わたしは意識を元の向きに戻した。天井が落ちてくるところだった。蟹がわたし達を圧し潰すように、体勢を低くしているところだった。

 すんでのところで、わたし達は海に飛び込んだ。

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