第14話 昼下がりの一時(帰りたい)
本日は日曜日。
ちびっ子達はヒーロータイムを楽しみ、
中高生はゲーム、勉強に勤しみ、
社会人はサザエさんに恐怖心を抱く。
そんなワクワクが待っている皆の休日。
そんなグレイトホリデーの真っ最中、俺は外出を余儀なくされていた。
「はぁ...家でアニメ消費してぇ...嫁ぇ...」
そんなことを言いながら俺はコーヒーを口に運んだ。
もちろんブラック...砂糖入れたけど。
コーヒーを飲みながら嫁の名前を呟くとは中々にヤバいやつだな、もうやめておこう。
さて、ここは俺の家の最寄り駅から駅4つ分離れたところにある喫茶店。
何故俺がこんなところに来ているのか。
気になる?気になるよね〜!?
...ごめんなさい、調子乗りました。
簡潔に言おう。待ち合わせである。
俺は何が悲しいのか、日曜の昼間の喫茶店である男を待っていた。
カランカラン
ドアに付けられたベルが鳴った。
つまり来客が来たという合図。
俺はそれが待ち人かどうか確認する。
「...やっと来たよ...」
どうやら当たりだったらしい。
俺の待ち人だ。何度も言う、男だ。
「よう弟よ、久しぶりだな!」
俺の待ち人...ウザさに定評のある俺の兄。淀木朋也(よどぎともや)がそこにはいた。
********************
「メールは確認したぞ、お前が部活なんて意外だな、おい!」
兄貴がそう言って、ゼハハと笑う。
黒ひげかお前。
淀木朋也。現在は大学の3回生。
家から大学までの距離は決して遠すぎることもないが、兄貴の要望で現在は一人暮らし。
充実した大学ライフを送っているようで、両親には頻繁にメールで連絡しているようだ。
しかし、俺は兄貴が嫌いである。
ホンットに嫌いである。
理由?
俺が人を嫌う理由なんて一つだけだろう?
そう、兄貴は生粋の陽キャラなのである。
友達も多く、彼女もいるらしい。
容姿は俺とそんなに変わらないのにな、なんでだろう。とりあえず爆ぜろバーカ。
しかし、それだけならまだマシだ。
それにプラスα...いやプラスαβγしても足りないくらいの兄貴のステータス情報。
そう、兄貴は俺以上のオタクなのだ。
むしろ兄貴の影響で俺もオタクになったくらいである。
オタクでリア充。この光と闇を併せ持つ存在。それが淀木朋也。
...つまり嫉妬だよ、うらやましいんだよ、バカヤロー!!
「それで、メールの内容確認したか?」
「おう...あ、アイスコーヒー下さい...アニメ作るんだって?」
「まあ...な」
「面白いじゃん、頑張れよ」
「違うだろ!?」
違うだろ〜、この〇ゲ〜!
ちなみに兄貴の毛根はまだまだ健在。
...文字通り根絶やしにしてやりたい。
「冗談だよ、絵が描ける奴が必要なんだろ?その相談しにメール寄越した...と」
「そういうこと...何かツテとか無いか?」
正直、兄貴の人脈なら絵師の1人や2人いそうな気がする。
まあ、だからこうして呼んだのだが。
「俺、今同人サークルやってるんだけど」
「初耳なんだが!?」
同人サークルなんて羨ましすぎる。
オタサーの姫とかいるのだろうか。
「うちで同人誌描いてる絵師を貸さないこともないぞ。アニメの絵を描くのもいい経験になるだろうしな」
「その言い方だと、なんか条件でもありそうじゃんか」
「...その絵師が中々厄介でな〜」
「厄介...?」
「ま、それは後々話すわ。でもそいつ1人で3人分の画力とスピードがある。アニメ作るならピッタリだと思うぞ」
「何が厄介かめっちゃ気になるんだけど...その人を紹介してくれるのか?」
「おう、明日にでも会わせてやるよ。明日は時間あるか?」
「明日学校だぞ...あるわけないだろ」
「じゃあ、今から呼ぼうか」
「は?」
兄貴は携帯を取り出した。
ポチポチ操作して、携帯を耳に運ぶ。
何この人、行動力の化身かよ。
俺にアームドさせてくれよ。
「...ああ、俺だ。...そう、昨日話した弟の部活の事...今時間あるか?...分かった」
兄貴は電話を切る。
「会いたいならそっちから来いだとさ」
おぉう...なかなかに怖そうな人物像が頭の中に浮かんだわ、今。
具体的にはハチマキ巻いた髭面のおっさん。
「んで、どうする?行くか?」
「...行こう」
...皆のためにも行くしかない。
俺はコーヒーを飲み切ってから席を立った。
...コーヒー代、奢ってねお兄ちゃん。
明るいあの娘の育成計画______美少女はオタクになりたい ハンズ @hanzu
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