第13話 思い立ったが吉日

「アニメよ!アニメを見るだけじゃなくて私達だけで作っちゃうの!」


閑崎が興奮気味にそんなことを言ってます。

いやー...閑崎さん?ちょっと落ち着こうな?

確かに俺が思いつきで言ってしまったのも悪いけども...


「落ち着きなさい、カンパニさん」


桜姉が閑崎を抑えようとする。

物理的に手で口を塞いで。


「んー!んーんんー!(何するのよ、桜羽センパイ!)」


「あなたみたいに理性なく本能で動くような人間はこうしないと止まらないわ」


桜姉が遠回しに閑崎をチンパンジー扱いする。いいじゃんチンパンジー可愛いじゃん。


「閑崎、落ち着いたか?」


俺の言葉に閑崎は頷く。

桜姉は閑崎の口から手をどけた。


「それで...アニメ作るの?どうするの?」


閑崎は落ち着いた様子で俺に尋ねる。

いややっぱり落ち着いてないわ、鼻息荒らげてフーフー言ってるわ。闘牛の牛か。

仕方ない...真実を伝えるか。


「...閑崎、アニメ作るのってどれくらい大変か知ってるか?」


「...知らない」


でしょうね。聞いた俺が馬鹿だった。

しかし本題はここから。


「アニメは絵を連続で映すことで動いているように見せているんだ」


「へー、そうなんだ」


まだ、どれだけ大変か気づいてないらしい。

ぽけーっとした顔で閑崎は俺の顔を見ている。


「つまり、絵を沢山描く必要がある」


「どれだけ描くの?」


「24コマ、絵の枚数で言うと8枚」


「なんだ、簡単じゃ...」


「が、一秒分だ。大体な、もちろん作品や場面によっては違うけど」


「...へ?」


閑崎はやっと俺の意図に気づいたらしく、呆気にとられている。

そして30分のアニメを作るのに必要な絵の枚数が3000枚と言われている

...アニメーターってすごい。


「で、でも!私は皆でアニメ作りたいの!」


閑崎はまだ諦めていないらしい。

ちなみに、なんでこんなに俺がアニメの作り方について知ってるかって?

...アニメーターに憧れた時期が僕にもあったのですよ、はい。

恐らく完成していたら日本のアニメの歴史が変わっていただろう...


「ぼ、僕は」


口を開いたのは篠沢だった。

躊躇いながらも真っ直ぐな目で。


「作って...みたいかな...皆で何かを作るとかって楽しそうだし...」


うん、篠沢がやりたいならやろう!...とは軽はずみには言えない。

だって一番の難敵がいるんですもの。

ほら黒髪がゆらゆら揺れてるよ。

メドゥーサかよ。


「そ、それで桜姉は?」


俺は死を覚悟して聞いた。いや冗談抜きで。

桜姉のヘッドロック、5秒で意識飛ぶから。

そんなサドスティック先輩、改め桜姉はため息をついた。


「幸也君に任せるわ」


と、それだけ。桜姉は俺に言った。


なら、答えは一つしかない...よね?

だってこの流れはさ?もう...ね?

...なんてメタ発言、今はやめておこう。

俺の意志は決まった。


俺は皆に向き直る。

閑崎と、篠沢と、桜姉。

そして俺で。


「...やろう」


「じゃあ...!」


「かにあに...神アニメ、みんなで作るぞ!」


噛んじゃったよ。

言いにくすぎだろ、かみあにめ。


「「おー!!」」


閑崎と篠沢が声を上げた。


篠沢が可愛い。

閑崎と一緒だと篠沢の可愛さがさらに上がることが分かりました。はい。


********************


その日の帰り道。

俺は家路を桜姉と共に歩いていた。

...家の方向が一緒なだけだから。

てか桜姉の家、俺の家の三つ隣だから。


「幸也君」


桜姉が俺の顔を見る。


「どうした、桜姉?」


「アニメ作るっていう話、本気?」


「ああ、本気だよ」


俺は桜姉の目を見て答えた。


「...絵は誰が書くのかしら...なんて意地悪な質問ね、絵は私に任せなさい」


「桜姉...」


そう、隠すつもりはなかったが桜姉は昔から絵がとても上手い。すごく上手い。

下手すれば同人誌描けば売れるレベルで。

昔は好きなアニメのキャラをよく桜姉に書いてもらっていては喜んでいたものだ。


「けど、私一人では無理よ、当たり前だけど。最低4、5人は欲しいわね」


「...俺の知り合いに絵師はいないよ?」


「身内の知り合いにならいるんじゃないかしら...?」


桜姉は俺を見て、ニヤリと笑った。

知り合いに絵師のいる奴なんて俺の身内にいるはずないじゃないですか〜...一人除けば。


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