第12話 部の方針、ついに決まる(遅い)
教室でのいざこざの後、俺と閑崎は部室までの廊下を二人で歩いていた。
しかし閑崎は先程から一切喋らない。
水を打ったように静かである。
怖いんだけど。
てか閑崎、お前ずっと喋ってないと息止まったりするんじゃないかと思ってたわ。
ほらお刺身が美味しいあの魚みたいに。
「あのさ...淀木君」
そんな下らない事を思っている内に閑崎がふと口を開いた。
俺は振り返って後ろの閑崎を見る。
「どうした?」
「その...幻滅した?」
「何が?」
「ほら...愛華にお金渡そうとしたし...」
「なんで幻滅するんだよ、俺が」
「だって...そんなことしてまで愛華と友達でいようとしたんだよ...?」
なるほど。
閑崎は先程の自分の行為が許せないらしい。
金を払ってまで友情を掴もうとした自分の行為が。
「色んな人と友達になりたいとか言っておいて...淀木君と友達になりたいって言っておいて...私、最低だよ...」
閑崎は今にも泣きそうな顔をして、悲痛な声で呟いた。
俺はそんな閑崎に言葉をかける。
「でもさ、閑崎」
「...え?」
「お前はあんなに貶されてもさ、それでもあいつと友達でいようと思ったんだろ?俺ならすぐ手を切るけどな、チョキンって」
俺は右手でチョキを作ってジェスチャーする。
「でも...!」
「お前は優しすぎるんだよ馬鹿。みんな仲良しなんて有り得ねぇ。あいつの事は一旦忘れて、とりあえず今は目の前にある
我ながら、らしくないセリフだ。
桜姉の言う通り、昔の俺はこんなことは言わなかっただろう。
「...馬鹿っていうな、馬鹿っ」
「あ、いつもの閑崎だ。...はははっ」
「...ふふ、ふふふ」
俺達は部室までの道を歩きながら
笑いあっていた。
********************
「ただいまー」
俺は部室のドアを開ける。
「あ、幸也、おかえり。閑崎さんは見つかった?」
篠沢が、戦国武将の漫画を読んでいた顔を上げて出迎えてくれた。
ちゃんと俺の貸した漫画を真面目に読んでくれている...嬉しいなおい。
「おう、もちろん!な、閑崎?」
「お、遅れちゃってごめんなさい...」
閑崎がひょこっと俺の後ろから顔を出す。
「あー、良かった!閑崎さん何してたの?」
「えっと...野暮用というか、諸事情というか...」
とてもじゃないが友達と口喧嘩していた(というよりは一方的にボコボコにされていた)とは言えない閑崎。
口をモゴモゴさせている。
「カンパニさん?遅れた理由はハッキリ言うべきじゃないかしら」
ここで桜姉の「どくばり」(言葉)!
...呼び方にはもうツッコまない。
「う...それはそうだけど...」
効果はバツグンだ!...言うとる場合か。
「桜姉、許してやってくれよ」
「幸也君、あなたは彼女を選ぶのね...そう、ならいっそ私がここであなたを...!」
「そういうヤンデレ発言やめようよ!?」
桜姉はマジでやりかねないから八割増で怖いんだよ...
結局、桜姉がそれ以上言及することはなかった。
********************
「それと幸也君、私から質問があるのだけれどいいかしら?」
「はい?なんでしょ?」
質問?なんだろうか?
不甲斐ない男を痛めつける方法?
やだこわい。
「この部は何をする部なのかしら?」
ピタッ
俺と閑崎の時が止まった。
これが
時よ止まれ!URYYYYYY...
「固まらずに答えてくれないかしら?」
なるほど、止まった時間の中で話せるのは桜姉だけらしい。さすがは桜姉...
そろそろマジで怒られそうなのでこの辺で。
桜姉の目からハイライトがなくなり始めたから...いやマジで怖いんだよ。
閑崎が答える。
「んー、アニメ鑑賞?」
「家でも出来るのでは?」
「じ、じゃあサブカルチャーについて話し合う...とか...?」
「サブカルチャーがアニメや漫画などの娯楽だけではないのはご存知?」
「...アニメの展開予想...」
「ネットですればいいのでは?」
うわー、えげつねぇ桜姉。
「よ、淀木君ーー!」
そんなドラえ〇〜んみたいに言われてもなぁ。
「篠沢は武将の知識増やすためだよな?」
「う、うん。そうだよ?」
篠沢が桜姉の顔色を伺いながら答える。
うーん。
この四人の中で目的を持って臨んでいるのが篠沢だけとは...。まあ桜姉も監視という目的があるけど...。
「部活動と名乗るからには何かしら、成果を挙げなければね」
桜姉のご指摘が入る。
成果...成果か...。
何か作るか?でも何を?
うーん、うーん、うーん。
「...アニメ...作るとか...?」
思いついたまま俺が呟く。
「それだぁー!!」
閑崎がいきなり叫んだ。
...えっ、どれだぁー?
えっ...!?マジですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます