第10話 部員追加(闇属性)
部室には不穏な空気が流れていた。
「幸也君をこれ以上弄ばないで」
落ち着きつつも芯のある声。
その声の主は桜姉。
黒髪ロング巨乳。
「私は弄んでなんか...私はただ...淀木君と同じになりたいだけなのに...」
対してこちらはいつもよりも張りのない弱々しい声。
その声の主は閑崎。
茶髪ショート巨乳。
...この会話だけ聞いてると、一人の男を取り合う二人の女の愛憎まみれの口喧嘩に聞こえるけど、違うからね。
「幸也君の言う通り、そこの可愛い子が男子だということは理解したわ。しかし、あなたの存在には納得出来ないわね」
今篠沢がブルっと震えた。
よしよし、俺が守ってやるからな。
「納得しようがしまいが関係なく、淀木君も私もこの部の一員です。あなたにどうこう言われる筋合いは無いと思いますが」
桜姉に感化され閑崎も完全に戦闘モード。
女子こわい。
「幸也君をこれ以上この部に留めるのは危険だわ、今日限りで幸也君は退部ということで」
桜姉が話を進めようとする。
いいぞ、桜姉もっとやれ。
「別に危険じゃないでしょ!私が淀木君を恋愛対象に見るなんて虚数の彼方にも存在しない確率よ!」
それはそれで傷付くからな、閑崎。
まあ俺もお前を恋愛対象としてなんて見てないけどな!ふん!ふふふのふん!
「そう言って、隙あらばパックリ...というのがあなたみたいな人のお得意のパターンでしょう?」
桜姉の陽キャ女に対する偏見がすごい。
まあ、陽キャパリピはノリで過ちを犯しポリスオフィサーにお世話になるんだろうけどな。これは偏見じゃないぞ。推測だ。
「ねぇ!淀木君!この女全然話が通じないんだけど!?」
「まあ、桜姉は昔から人の意見は聞かないタイプだったからな。今に始まった話じゃない」
「幸也君、こんな女は捨てて私と共に生きましょう。あなたにとってもそれが幸せよ」
桜姉は流し目でこちらを見てきた。
うわー、エッロ。
もう、よろしくしてもいいでしょうか?
「淀木君!まさかこの女を選ぶつもり!?」
だから勘違いするような言い方はやめい。
実際、俺は報酬のためにこうして部に入っているわけで。
まあ、ここまでくると報酬なんてどうでも良くなってくる。金貯めればいいだけだし。
つまり桜姉の言う通り、部を去るのが一番なんだろう。その方が自分の時間が増える。
しかし、しかしだよ桜姉。
「悪い、桜姉。俺はこの部に残るよ」
俺はそう言った。
閑崎と篠沢と。
皆で過ごす時間は決して悪くは無い。
これからも続けていくのも悪くない。
だから...
「俺はこの部を続けたい」
一瞬の静寂。
「そう、幸也君がそこまで言うならこの部に残ることは許すわ。しかし」
良かった、桜姉も話せば分か...しかし?
「私がこの部に入って、幸也君に害虫が寄り付かないか監視します」
これはまた斜め上からの切り返し。
マルセロもびっくりのターン。
さっきは入部希望じゃないって言っとったやん...
「特に、カンパニ...だったかしら?あなたをずっと見ていますから、そのつもりで」
カンパニなんて留学生、うちの部にいました?
「閑崎よっ!?カンパニって誰よ!?」
ああ、閑崎か。桜姉絶対わざとだな。
「という訳でよろしくね、幸也君」
桜姉が笑った。
美しい笑顔。しかし、どす黒い何かが潜んでいる気がする。
てかちょっとはみ出て見えてるから。
「お、おなしゃす...」
俺は運動部の適当な挨拶風に返事した。
この部の構成員が闇すぎる件について。
もちろん篠沢以外な。
ちなみに篠沢は口喧嘩中、ずっと耳を塞いでプルプル震えていた。
チワワかよ。可愛いな。
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