第7話 襲来(俺得)
金曜日。
明日が休みで、しかも夜九時からは金曜ロー〇ショーがある。ラピュタやトトロなどの名作が観られるのだ。まさにプレミアムフライデーである。
夕方のゲリラ豪雨が止み、帰ろうとしたまさにその時そんな輝かしい日があの女によって侵されようとしていた。
誰って?金持ちでビッチなあの娘だよ。
「部活、いくわよ!」
「部員集まってないのに何するんだよ」
俺は即座に返答する。
「部室で待ってたら部員が来るかもしれないじゃない」
なるほど、つまり部員志望を待つために部室にいたいが一人じゃ暇なので俺を誘ったのか。かまちょかよ。俺には需要ないよ。
やだね、ばーか。
「やだね、ばーか」
「なんですって!?」
あ、やばい本音が。全く、俺の口が最近言うことを聞かない。めっよ、めっ!
「早く来なさい...さもないと...」
「あー、分かったよ」
恐らくまた報酬の話を持ち出すのだろう。
非常に面倒臭いが、ここは閑崎に従うことにする。
てか閑崎がオタクになるまであとどれだけかかるのだろうか。先が思いやられる。
********************
「こないね」
「こないな」
部室で俺達は暇を持て余していた。
いや、実際に暇を持て余しているのは閑崎だけで俺はラノベの世界にダイブしていた。
「ねー、私にも小説貸してよー」
「...はぁ、お前オタクを名乗りたくば自分で買えよな...」
ガラガラ
突如、部屋のドアを開ける音。
開けたのは俺でも閑崎でもない。
つまり第三者だ。
俺と閑崎がドアの方を見る。
そこに居たのは
閑崎よりも少し小柄な女子だった。
********************
「それでこの部に入りたいのね?」
部屋に用意した机を隔てて閑崎が女子に話しかける。
「え、えと...」
それに対しておどおどする女子。
閑崎以外の女子と話す時の俺かよ。
見た感じは俺達と同じ年にみえる。
ちなみに格好は体操服。
何故だかは知らないが、推測すると先程の夕立で制服をやられたのだろう。
しかし見覚えがないということは他のクラスなのだろうか。
「部に入りたいから来てくれたのよね?」
閑崎は自分のペースで話を進める。
流石陽キャ。強引さ加減は筋金入りだ。
「ぼ、僕...」
うんうん、ゆっくりでいいよ...僕?
「僕、戦国武将とかが好きで...この部は日本の文化を研究してるって張り紙に書いてあったから...」
「そうなの...はい淀木君、パス」
閑崎は俺にバトンを手渡すというか150キロの直球で投げてきた。
...こいつ、戦国武将とかを知らないからって俺に振りやがった。
俺はその女子(?)と向き合う。
「えっと、とりあえず名前聞いていいか?」
「あと、僕は篠沢木葉(しのざわ このは)っていいます。二年四組です」
なるほど木葉か、可愛い名前だ。この子にピッタリだろう、女の子ならば。
「性別聞いてもいい?」
俺のその質問の意図が分からなかったらしく、篠沢は首をかしげた。
その姿も可愛い。
「男だよ...?女の子に見えた?」
うん、見えたよ。しかも可愛いよ。
しかし、そう言うとプンプン怒るのがオトコの娘のお約束。絶対に口には出さない。
「や、やっぱりなー。男だよなー。そう思ったわ。あは、あはは」
俺はそう言って誤魔化し笑いをする。
「えっ!男なの!?女の子に見えた!」
ここで閑崎のKY発言。
...KYって死語じゃないよな...?
篠沢はプンプン怒りながら
「もうっ!僕は男の子だヨ!」
なんて言わずに暗い顔をして俯く。
誰だ篠沢をこんな目に遭わせたのは。
よし閑崎か。し〇いてやる。
「...僕、よく女の子に間違えられて...だから男らしい戦国武将に憧れるんだ...」
篠沢がゆっくり話し始めた。
なるほど、コンプレックスを抱えているからこその武将好きなのか。
「だから...この部に入ってもいいかな...?戦国武将についてもっと知りたいんだ」
篠沢は上目遣いで俺を見てきた。
正直閑崎の1000倍可愛い。
しかし本当の事を伝えなければ俺の心に罪悪感が残る。
俺は真実を伝えることにした。
「篠沢」
「うん」
「この部はな、アニメやラノベを楽しむための部なんだ。いや立案はそこのバカなんだけどな?」
閑崎が何か喚いているが無視して続ける。
「うん?」
篠沢はキョトンとする。
「じ、じゃあ戦国武将とかの研究とかは...」
「まあ待て、アニメやゲームには戦国武将をテーマにした作品がいくつもある」
例えば戦国BA〇AR〇。
「だからそこから知識を深めていくのはどうだろう?」
俺からのせめてもの提案だ。
実際ここまで足を運んでくれたのだ。
後悔はさせたくない。
「...それで武将について分かるのかな?」
「当たり前だ。アニメというコンテンツの可能性は無限大だからな」
「...なら入るよ、この部に。それにアニメとかって楽しそうだし!...それで、えっと君の名前聞いてなかったね」
「俺は淀木幸也だ、よろしくな篠沢」
「よろしくね、幸也」
その篠沢の可愛さの余り、俺の心は遥か彼方へ飛んでいった。
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