第6話 そうだ、お店に行こう
ダンボールやら備品だらけの倉庫を掃除するのに約1時間半を要した。
これだけの大掃除をこなすと達成感がおのずと湧いてくる。
「ふぃ、終わったな」
「そうね、結構広いじゃないこの部屋」
閑崎は両手を広げてくるくる回っている。
...リアルにそれする奴いるんだなぁ。
「じゃあ後は部員だけね!」
「そうだな、集まるといいけどな」
まあ期待はしていない。
このまま自然消滅するのが一番だ。
「じゃあ俺行くとこあるから。じゃあな」
俺は鞄を背負って部屋を出ていこうとする。
「...待って」
閑崎の可愛いらしーい声。
「なんざんしょ?」
「どこ行くの?」
付いてこようとしているな、こいつ。
「別に普通の寄り道だよ」
「私も行く!」
うわー。うっぜー。有名横スクロールゲームのジュ〇ム並にうぜー。
「...はぁ。分かったよ、付いてこい」
「やったー!」
ホント、可愛い顔を打ち消す鬱陶しさだ。
********************
「ここ?」
「ああ」
着いた場所は駅近くのアニ〇イ〇。
俺の行きつけの場所で、週3で寄っては新しいグッズや小説を物色している。
「私、こういうの見たことはあるけど入ったことないなー」
「だろうな」
俺は店の中に入る。閑崎も後ろをついてきた。
俺のいつもの巡回ルート。
まずはアニメのグッズコーナーだ。
「ふーん、このファイルの絵いいな」
俺が手に取ったクリアファイルには下着姿の女の子が二人寝転がってこっちを見ているという、とても素晴らしい絵がプリントされていた。
「それ、学校で使えるの?」
「だまれ。ファイルは書類を挟むためにあるんじゃない、見るためにあるんだ」
「ファイルを作った人が聞くと怒るようなセリフね」
閑崎は呆れた顔で他のグッズを見だした。
「あ、このパスケース可愛...高っ!!」
「えっ、パスケースってそれくらいするんじゃないの普通」
パスケース4000円は普通だろ。
まったく世間知らずのお嬢様には困ったものだ。
「でも欲しい...買っちゃおっかな」
「俺は止めないぞ、しかし閑崎。そのパスケースの絵のヒロインはかなりビッチで...あ、同類だから惹かれあったのか!」
ペシッ
パスケースで叩かれた。
おい、売り物だぞ、それ。絶対買えよな。
********************
「そんでここが本コーナーだな」
「すごい、見たことない本ばっかり」
この店に並べられているのはラノベや漫画、アニメ資料集ばかりだ。閑崎が見たことないのも当然だろう。
「これ何?」
閑崎が指差したのは薄い本だった。
表紙ではイケメンがイチャイチャしている。
「...閑崎、表紙をよく見ろ」
「え?...R...18...〜〜!!」
「それは俗に言うBLだ。お前にそのステージは早すぎる」
「...早く他の場所行きましょう...」
閑崎は耳を真っ赤にさせて逃げていった。
お前、ビッチの癖に照れてんじゃねぇよ。
...男同士は専門外か。
********************
「買っちゃった!明日から使おーっと」
閑崎はパスケースが入った袋を抱きしめてそう言った。
「淀木君は何買ったの?」
「え?俺、何も買ってないぞ?」
「はぁ!?じゃあ何であの店行ったの!?」
「新しいグッズ入ってないか確認するため」
店に入って何も買わないなんてザラにあるだろう。え?あるよね、あるよね?
「ま、そのパスケースがお前のオタクグッズ第一号だな」
「...そう、そうね!これで私もオタクだわ」
「そりゃないわ」
俺は閑崎を置き去りにして歩き出す。
「ちょっと待ちなさいよ!」
閑崎が走ってついてきた。
「部員集まるかなー」
「...集まるといいな」
俺はそう言った。
ほんの少しだけ。
部活をしてみたいと。
案外こいつといても楽しいかもしれない...と思った。
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