第5話 部活動開始

次の日の学校。

俺と閑崎は職員室に呼ばれていた。

別に悪い事はしてないのに職員室に来ると無闇にドキドキするよね、なんでだろう。


「それで、部活を作りたいんだね?」


「はい!『日本文化研究会』です!」


うわー、らしい名前付けてるけど実際は

「ラノベアニメ堪能会」だからね。

会しか合ってねえ。


「いいねー、青春だねー」


えっ!?どこが!?と突っ込みそうになったが言葉を飲み込む。

鎌谷先生は俺達のクラスの担任。

担当科目は英語で、教え方が上手いと評判である。

それに優しい。地味に美人。

...男だと思ってた?


「顧問は私がするけど部員は揃ってるの?」


鎌谷先生が首を傾げた。

そう、部活を作る上で衝突する第2のイベント「部員集め」だ。

実際、ここで詰んでいると言っても過言ではないだろう。

だってオタクの巣窟だよ?俺ならやだもん。


「大丈夫です、任せてください!」


閑崎はそう言って胸を叩く。

その自信どっから湧出してくるの。


「じゃあ頑張って二人目探せよー」


俺はそう言って立ち去ろうとする。


「え、え!?ちょっと待って!?あなた部員でしょ?!」


「いつ言ったよそんなこと」


「そういう流れだったでしょ!」


うわ、流れで物事決めるとか。

ちゃんと話し合えよ。ホウレンソウって知ってる?


「とにかく、あなたは部員だから!手伝いなさいよね、さもないと報酬は無しよ!」


「うっ...仕方ないなやってやるよ!」


俺が意を決して叫ぶ。


「うん、二人とも」


ここで鎌谷先生の声。


「ここ職員室だから。少し落ち着こうか」


周りを見ると教師陣が俺達をガン見していた。

俺と閑崎はペコペコしながら職員室を出た。


********************


「それで、どうするんだ」


いつもの放課後の教室。俺と閑崎は部員について話し合っていた。


「そうねー、淀木君入ってくれそうな友...知り合いとかいない?」


今友達って言いかけてやめたな?

まあ実際いるのはオタク仲間くらいなのだが。いいもん、いらないもん。


「さあな、一人くらいは見当はつくが」


ほら一話冒頭で出てきたあの男だよ。


「じゃあ呼んできてよ!」


「ポスターとか作って貼った方が人来るんじゃないの?声をかけられる奴にも限度があるし、名前が『日本文化研究会』なら騙される奴もいるだろ」


我ながらゲスい作戦だが、これが一番有効的だろう。部に入ってもらえばこっちのものだ。どんな手を使っても退部させなければいい。


「あなた、無駄に頭が回るのね」


「まあな...無駄てなんだ無駄て」


「じゃあ私作ってくるから!淀木君は鎌谷先生に伝えといて!」


そう言うと閑崎はピューッと走っていった。

あいつの作るポスターとか完成する前から想像出来るのだが。

とりあえず俺は職員室に歩を進めた。


********************


次の日の学校。


「はい、早速貼るわよ!」


そう言って閑崎が手渡してきたのは

ラメやらビーズやらスパンコールやらでキラキラデコデコされたポスターだった。

エレ〇トリカル〇レードか。

まあ俺には部の存亡は関係ない。


「じゃ、鎌谷先生に渡してくるわ」


俺はキラデコポスターを丸めて職員室に向かった。

昨日と合わせて三回目だよ。そろそろ何か悪事がバレそうな気がする。してないけどね!


********************


「これは...またすごい宣伝力だね」


鎌谷先生はお手本のような苦笑いをしながらポスターを受け取った。


「あ、そうだ。はいこれ」


鎌谷先生は机の引き出しから鍵を取り出した。

俺はそれを受け取る。


「これは?」


「部室の鍵だよ。三階の東棟にある物置だから今日にでも掃除しなさい」


「なんで俺に鍵を...?」


「君が部長だと閑崎から今朝聞いたから」


「fu〇k」


「うん、私英語教師だからね。そういう発言は控えようね」


********************


放課後閑崎と俺は部室になるらしい部屋に向かった。


ガラガラ


ドアを開けるとそこにはダンボールの山があった。


「これをまずは片付けないとな」


「よし、やるか!」


閑崎はダンボールを片付け始めた。

俺も立っているだけでは申し訳ないので手伝う。


「なあ、閑崎」


「どうしたの?」


「お前、なんで俺らみたいな奴と友達になりたいの?」


俺は不躾に質問する。

実際気になっていた。なぜ閑崎はオタクになる必要があるのか。


「だって、学校っていう同じ空間にいるのに友達にならないのって勿体なくない?」


閑崎の答えはそれだった。

ああ、やはり閑崎はこういう人間なのだ。

誰とも仲良くなれて、誰とも上手く話せて。

だからズケズケと俺達だけの領域に踏み込んでくる。

だって仲良くなれると信じているから。


「ふーん」


俺はダンボールを畳みながらそう言った。

まあ俺には関係ない。

こいつと友達になんてなれないさ。きっと。

だって俺には必要ないから。


ダンボール多いな。おい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る