第3話 神アニメはいつ見ても面白い

俺の家の近くに小学校がある。

俺のかつての学舎だ。あの頃の俺は純粋だった...いろんな意味で。

穢れの無いその時の俺の思い出が、小学校の前を通る度に思い出される。

...小学生の時以来だな、ここで待ち合わせ。

俺は母校を眺めながらそんなことを思っていた。今は午前11時。

ちなみに待ち合わせの時間より1時間過ぎている。

え?誰と待ち合わせしてるか?

そりゃあのオタクになりたいとか言ってる頭のおかしい女だよ。


「どんだけ待たせるんだよ...」


俺がため息混じりに呟く。その時。


「ごめーん!遅れちゃった!」


閑崎世羅が小走りで近付いてきた。

こうゆう時アニメの主人公なら


''あぁ、今来たとこ''


とか言うんだろうが、俺はそんなに甘くない。ガツンと言ってやる。


「お前が俺の家来たいって行ったんだろ?待ち合わせの時間くらい守れよ...」


「ごめん、寝坊しちゃった」


ほう?寝坊だと?度胸があるな。


「まあいい、今日は寝れないと思え」


「え!?泊まるなんて聞いてないし、淀木君の家なんかに泊まりたくない!!」


「安心しろ、明日の3時には解放してやる」


「明日学校だよね!?」


「うるさいな、これだから陽キャは」


「それ、陽キャとか関係ある!?」


「とりあえず付いてこい」


俺が歩き出す。閑崎も俺のあとを付いてきた。...隣は歩かないのな。了解した。


小学校から歩いて15分程で俺の家に到着。


「じゃ、上がってくれ」


「お、お邪魔します」


閑崎は恐る恐る俺の家に入る。いやお化け屋敷じゃないんだからもっと気楽でいろよ。

閑崎を二階に案内し、俺の部屋に入れる。


「わぁー...なんてゆうかオタク部屋だね」


「感想がそれかよ、ボキャ貧か」


俺の部屋はベッドとデスク。フィギュア鑑賞用の棚とテレビがある。部屋は不自由無く広くかなり助かるが1人で過ごすには広すぎるくらいだ。


「で、俺の家で何するんだ?」


「アニメを見る!ゲームする!」


「俺の家はネカフェじゃないんだぞ...」


俺はとりあえずアニメのDVDが並べられた棚から幾つか取り出す。


「これ見るの?」


「お前に貸したラノベのアニメだ。見たいって言ってただろ?」


「やった!見たかったの!」


俺はさらにDVDを取り出す。

閑崎が不安そうに聞いてくる。


「えっと...量多くない?」


「地上波の1期、2期。年末のスペシャルに劇場版2作。合わせてこれくらいだ。妥当だろ。よし、見るぞー」


「...これって今日中に終わる...?」


「この神アニメを1日で堪能し切ろうとするなんて傲慢だな、お前」


「なんで私、怒られてんの!?」


俺の解説付き、アニメ上映会が始まった。


********************


「あー、このシーンは作画班いい仕事してるなー、声優の演技力にも感服する」


「.....」


「俺的にはこのアニメでも一、二を争うシーンでな...」


「.....」


「ちなみにこの後サブヒロインが...」


「...ウザい!!解説ウザい!」


「うわっ、いきなり大声出すなよ」


「さっきから横からうるさいのよ!静かに見たいの!?分かる!?」


「解説くらいいいだろ!」


「たまにネタバレするし!」


「ネタバレされても楽しめよ!」


「淀木君の方がよっぽど傲慢だよ!」


...はぁ、ネタバレくらいで怒るなよ...俺がされたら許さないけどな


「でもやっぱり面白いね、このアニメ」


「それは同意」


「声と映像がほんとにすごい」


「それも同意」


「少しはオタクになれたかな?」


「全くもって拒否」


「拒否!?」


********************


「とりあえず地上波放送のやつは全部見たな」


「はぁー、面白かった」


「次は年末スペシャルだがその前にメシだな、ピザでいいか?」


「えっ、そんなの悪いよ!」


「別に俺も食べるし、シェアだシェア」


「親は今日はいないの?」


「今日は二人とも仕事。休日出勤は全然珍しくないぞ?」


「へぇーそうなんだ」


...てか親がいない、女の子と二人きりとかフラグ立ちすぎじゃね?

別に期待なんかしてないんだからっ!


ちなみにピザはマルゲリータとシーフードで争いが起こり、結局シーフードとなった。


********************


「おいしー!やっぱりピザ最高!」


「そりゃ良かった、食べ終わったら続き見るぞー。早くしろ」


「...え?これでお開きじゃないの?」


「3時には解放するって言ったよな?」


「あれって冗談じゃなかったの!?」


その後、年末スペシャルを見終えて劇場版1作目を鑑賞し、その最中に日を越した。劇場版2作目をその後鑑賞、時計を見ると予定の3時になっていた。


「ふぅ...よし帰っていいぞ」


「...もう無理...寝かせて...」


閑崎はそのまま気絶するように寝落ちした。

その閑崎を起こしたのは朝の6時半だった。


...よく寝てる女の子を襲わなかったな俺。やっぱり人間が出来てんだな。

度胸が無いわけじゃないから、全然違うから。そんなんじゃないから。


...やっぱり神アニメはいつ見ても面白いなあ。一緒に見る人がいるとさらに楽しい。解説出来るし。

女の子が家に来て、感想がそれである。

まあ、オタクだし閑崎は恋愛対象じゃないし。仕方ないね。


ちなみに次の日、てか今日学校で閑崎に会うと、完全に目が死んでいた。

そんなに感動したか、そうかそうか。

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