第45話 馬超のむむむな話

「むむむ」、「何がむむむだ!」のフレーズで有名(?)な五虎将軍の一人、馬超。

父である馬騰を曹操に殺され、曹操に反旗をひるがえすも離間の計で敗れ、漢中に落ち延びる。張魯軍の援軍として劉璋の救援に来たところ、李恢に本当の敵は誰かを諭され、劉備の元に降ると言うのが有名である。

が、これは『演義』の創作で史実ではない。

正史『三国志』では正義の為に戦う馬超はほとんど見られない。

まず、曹操に反旗を翻したのは馬家の領土を取られると思ったからで馬騰が殺されたのは馬超が反旗を翻した後に殺されたのである。

流石にこれはまずいと思ったので、『演義』では馬騰の死が先にあって父の復讐の為に戦うシナリオに変わった。こうする事で私利私欲で動いた息子ではなく、父の為に悪を討つ正義の息子に早変わりしたのである。

さらに、史実では馬超の非道さを語る。

曹操に敗れた後、『演義』では漢中の張魯を頼って落ち延びていったが、史実では羌族をまとめ、隴上で蜂起を試みる。多くの郡県は彼に従ったが、涼州刺史の韋康だけは冀城に篭って出てこない。そこで一計を案じて使者を送った。「降伏すれば命を助けよう」と。韋康はその言葉を受けて降伏したが、なんと馬超は彼を殺害してしまう。厳密には張魯の配下だった楊阜に殺させたのだが、騙し討ちに等しい非道ぶりである。さらに殺した韋康

の部下を自らの配下にしようとした。流石に黙っていられない韋康の元部下は反乱を起こす。痛い目を見た馬超はそのまま張魯の元へと落ち延びた。

『演義』の性格からすれば考えられない馬超の行動である。ちなみに落ち延びた後も失地回復を狙って韋康の元部下達と戦ったが、回復出来ないばかりか、疎んじられてしまう。

詳しくは別の話にしたいが、馬超と因縁が深く、戦争に出た唯一の女性として知られる王異はここで出てくる。

ゲームでは馬超を殺しにかかるのはこう言う因縁があるからである。

そこへ劉璋攻略中の劉備に手紙を送って降ると言うのが馬超加入の経緯である。

こんな扱いづらい男を迎え入れる劉備の懐の深さに感心するが、それにしても史実での馬超の非道さには驚いてしまう。

ゲームだと正義を語る熱血漢なのにここまでくればただのDQNである。

ちなみに劉備配下の馬超が活躍したかと言うと書いてない。それほど武功を挙げたと言う事もなかったのだろう。そう思うと、馬超がなんだか可哀想に見えてくる。


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