第44話 夏だし、怪談話
夏本番。
台風や大雨の影響もありましたが、嬉しいどころかつらく暑い日々が続きました。
かくいう僕も、テニス中少し熱中症気味になって倒れそうになりました。夏の暑さには慣れているつもりでしたが、この暑さは異常でしたね。
と言うわけで今回は夏の厳しい暑さが少しでも和らげそうな怪談話を一つ紹介したいと思います。
はじめに断っておきますが僕には、霊感はありません。
なので幽霊や妖怪を見た事は一度もありません。
でも、幽霊や妖怪は昔から強く信じて来ました。
逆に見たいと言う思いの方が強く、霊感のない自分が悔しいと思う事もありました。
けれども、人生で一度だけ恐怖体験をしたことがあります。
数年前、台湾へ三週間程、留学した時のことです。
留学して初めての週末に留学先の現地学生達が僕ら留学生の為に旅行を企画してくれることになりました。
その途中、鄭成功が占領した赤崁楼と呼ばれる場所を見学する前に軽食を取ることになったのですが、現地学生が僕にこっそり「関帝廟がこの近くにある」事を教えてくれました。
中国史が大好きな僕にとって、現地の関帝廟に行くことは長年の夢でもありました。
ちなみにあとになって知ったのですが、その関帝廟というのは台湾最古のものであり台湾における関帝廟の総本山とされ、とても神聖な場所と言うのです。
かなり重要なものですが、そんな事も知らず、現地で初めて見る関帝廟を写真に収めたいと強く思いました。
そこで、おもむろにデジカメを出してシャッターを切り、画面で撮り具合を確かめました。
すると、手ブレをしていたのでしょうか、周りがぼやけていました。
手ブレが比較的少ない僕にとって珍しいミスです。
もう一度とりましたが、やはり周りがボヤ勝てブレています。
さらにもう一度撮りました。が、やはりブレていて、うまく撮れませんでした。
「3回も撮って手ブレするなんて」と恐怖を覚えた僕は写真を全て削除して、外観を撮るのを諦めました。
結局そのまま内観を撮影し、お参りを済ませて友人達と合流することにしました。
手ブレ写真の事は誰にも言いませんでした。
きっと信じてもらえないだろうと思ったからです。
それから一週間後の事です。手ブレ写真のことなんかとうに忘れた僕は、やはり現地学生の企画で台北へ旅行に出かけました。
その帰り道のこと、僕はバスの中で財布を落としました。
バスの中までは確かにポケットの中に入っていた筈の財布が、バスから降りる時にはどこにも見当たらないのです。
何度か海外旅行に行った事はありますが、財布だけでなく貴重品を落としたことはありませんでした。
警察にも届け出ましたが、結局、財布が出ることはありませんでした。
でも、財布を無くす一週間前に関帝廟を撮ったあの三枚の手ブレの写真が消去したとはいえ、気になっていました。
あれは一体何だったのか、帰国してからずっと考えていました。
ある時、その訳を知る事が出来ました。
知り合いの心霊現象に詳しい人に手ブレ写真についてお話したところ、
「それは警告だったのかも知れない」と言いました。
その理由は関帝というのは武神や学問の神として有名ですが、実は若い頃に塩の商人をしていたことやまたそろばんを発明したとの言い伝えから財神としても祭り上げられています。
あの三枚の手ブレの写真はもしかすると、関帝様が僕に対して財布を無くす事への警告だったのかも知れないと言うのです。
また、僕が写真を怖いからと言って削除した事に対しては「賢い選択だっだ」と言います。
そういう類の心霊写真というのは手元にあると言うだけで良くないことが起こる可能性があるかも知れないので、消去して財布がなくなっただけで済んでよかった、と言います。
この言葉に恐怖を覚えました。
実は無くした財布とは別にクレジットカードや予備のお金を入れた財布を別に持っていたのです。もし、もう一つの財布をなくしていたと思うと・・・考えたくもありません。
手ブレの写真自体はもう手元にないのでこの解釈がどこまで正しいのかは分かりません。
実際、周りの友達にこの事を話しても「写真を撮るのが下手なだけで考えすぎだ」と笑われます。
ただ、自分で言うのもなんですが、僕は殆ど手ブレはしないし、写真を取った際、手ブレをした感覚がほとんどないのです。
やっぱり、あの写真は財布を無くすことへの警告だったと今でも僕は捉えてます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます