第37話 夢を語り合おうぜ!
『論語』には数多くの弟子が登場する。
有名どころでは、子路、顔回、曽子など、中には一度しか出ないものもいる。そんな個性豊かな人々と孔子の関係性を見てみたい。
孔子が四人の弟子、子路、曾晳、冉有、公西華がそばにいた時の事である。
「今日は私を年長者と思わず、答えて欲しい。お前達は皆、いつも認められていないと嘆いているが、もし認められたのだとしたらどうするかね?」
真っ先にバカ弟子こと、子路が答えた。
「大国が小国に囲まれその上、民は飢饉に苦しんでいる。そんな国で私はこれを全て解決して三年の内に勇気と礼儀作法を弁えた民に育てていきたいと考えております」
すると、孔子はおもわず吹き出して笑った。
そして、「求(冉有)よ、君はどうする」と冉有にふった。
「私は四方六七十里を治めて、三年以内に民の生活を豊かにしたいと考えております。また、その礼楽は君主に任せたいと思います」
孔子は「赤(公西華)、きみは?」といった。
公西華は言った。「私には自信がございません。今は学びたいと存じます。いずれは宗廟のことや外交に従事したいと思います。礼服を着まして出来れば、下位の役人に」
最後に孔子は「点、きみはならどうする」と曾晳にふった。彼は曽子と呼ばれ、『論語』の編纂に大きく尽力した曽参の父にあたる人である。
こんな時にも琴を弾いていた彼は琴を下において立ち上がった。
「私の願いは御三方の物とは違うのですが」
「なぜ、躊躇う。めいめい、自分の志を言っておるだけなのだから」
「春の終わりに春の服を着て成人の友人、五、六人と子供、六、七人と共に沂水に浴して雨乞いの舞台で涼んで歌でも歌って帰りたいものですね」
それを聞いて孔子はホッとため息をつき、
「うん、私は点に賛成だね」と言った。
三人の弟子が帰った後、曾晳だけがその場に残っていた。どうやら彼には疑問点があったらしい。
「先生はあの三人の抱負をどうお考えですか?」
「どうということもあるまい。各々の志を言ったまでのことだよ」と孔子は言った。
「では、由(子路)を笑ったのは何故です」
「国を治めるためには礼がなければならない。ところが、由には譲り合いがなかった。だから、笑ったのだ」
「では、求は?彼の望みは国の志ではありませんが」
「いや、四方六七十里だろうと五、六十里だろうとも国は国だ」
「では赤はどうでしょう、国の志とは言い切れませんが」
「いやいや、宗廟や外交もやはり国の行事だ。赤が下位の役人なら誰が上に立てるというのだね」と孔子は言った。
三人の志はいずれも国に関わる重要な事を強化したい、という願いである。
ところが、曾晳のニュアンスは彼等とは異なっている。国の為に尽くすというよりは風情のままに生きようとする生き方を望んだ。孔子はその生き方に賛成したところを見ると、そのような人物が人としてゆったりと生きていけると言っているだろうか。
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