第35話 将軍壁死
『キングダム』には壁という将軍がいる。
昌文君の副将として登場し、現在将軍の地位にいる生真面目な軍人である。主人公の信とは王都奪還戦からの付き合いがある。
実は彼も信と同じく歴史上の人物であると言われている。
その一節が、今回のタイトルである将軍壁死である。
この文章を書き下すと、「将軍の壁が死んだ」となる。これだけではよくわからないので前後の文章はこうある。
八年、王弟長安君成蟜將軍擊趙、死屯留、軍吏皆斬死、遷其民於臨洮。
将軍壁死、卒屯留、蒲鶴反、戮其尸。
『史記』 始皇本紀
(始皇)八年、王の弟で長安君の成蟜が軍を率い、趙を攻撃したが、屯留で死んだ。軍人、官吏は皆、斬り殺されてその民は臨洮に帰っていった。
将軍の壁は死に、屯留の兵卒であった、蒲鶴が反乱を起こしたが、鎮圧されその尸を晒した。
『キングダム』はある程度、史実に則って物語が進んでいる。
その為、成蟜の反乱はどうしても避けては通れない事件である。作中では、成蟜は策略に嵌められてしまいら反乱を起こした張本人とされてしまったという設定になっている。解釈は変わってはいるが、反乱は起きた事実は変わらない。
その戦いの最中、壁は死ぬのかと思ったら死ななかった。
実は「将軍壁死」とは「将軍の壁が死んだ」ではなく、「将軍が壁死した」という読み方ができるという説が浮上した為である。
壁死とは聞き馴染みのない言葉だが、「壁の中で死んだ」、つまり、城壁の中で死んだ事を意味するのだと言う。
ここでいう、壁とは前後の文脈から判断すると、屯留であると判断出来る。
つまり、成蟜が反乱を起こし、屯留で死んだ時に彼に従った将軍は皆屯留の城壁の中で死んでしまった、と言う解釈が出来る。
その後、軍人、官吏を皆殺しにされた事に腹を立てた屯留の兵卒の蒲鶴が反乱を起こしたが、すぐに鎮圧されてその尸を晒された、という内容となる。
たしかに辻褄があってはいるようにみえる。
壁死という熟語自体、ここにしか登場しない、辞典にすら載っていない言葉なのだ。
やはり、壁死ではなく、将軍の壁が死んだ、という解釈としては自然な気がする。
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