第25話 ファラオであり王妃
古代エジプトの歴史の中で女性がファラオの座に就いたという記録は二度ある。
一人目はニトクリスという女性でヘロドトスの『歴史』、プトレマイオス朝のエジプトの神官、マネトの『アイギュプティカ』にその名が記録されている。
『歴史』には彼女は自分の兄の敵に復讐する為に披露宴会場を水浸しにして水死させた。その後、焼身自殺をしたとされ、『アイギュプティカ』によると、第6王朝の最期の女王であり、その治世は12年と短いものであったと言う。
しかし、エジプトの記録では、第6王朝最期のファラオはネチェルカレーとなっている。彼をニトクリスと同一視する説もあるが、今だ確証を得ていない。
こう言うわけでエジプト史上最初の女帝とは断定出来ていないのである。
もう一人の女性はハトシェプスト。
現在、エジプト史上最初で最後の女ファラオと考えられている。
彼女の夫、トトメス2世は遺言で自分の息子である、トトメス3世に王位を継承するよう指示していた。
ちなみにハトシェプストの子ではなく、イシスという女性の産んだ子、つまりは甥である。
だがトトメス3世はまだ幼く、とてもエジプトを支配するような能力を持ち合わせていなかった。そこで、彼女はファラオとして即位することで甥との共同統治を行ったのである。
権力欲の為に王位に就いたとも言われているが、どちらかというとトトメス3世に王位を継承させるまでの「つなぎ」という立場にあったのでは?と考えられている。
とは言え、それまで男性による統治が通例であったのに女性がファラオとして即位することなど前代未聞の出来事である、
しかし、彼女は自ら女ホルスと名乗り、在位中はつけ髭を生やし男装して職務に臨んだと言われている。
彼女は戦争ではなく、外交を通じてエジプトに繁栄をもたらした。さらに、巨大なオベリスクや自らの葬祭殿を建築し、その栄華を誇った。
一方のトトメス3世というと、政治的権力はほとんど持たされなかった。
共同統治の期間、彼は軍事に従事してたようである。
平和の時代と言ってもやはり他国との戦争は避けられなかったのか、何度か戦争をする事もあったらしい。
その後、ハトシェプストが亡くなると成長したトトメス3世による親政が行われることになった。
彼は真っ先ハトシェプストの名をエジプト中の記録から消去した。
普通に考えラバ権力を持ち続けていた彼女への恨みからの行動とも取れる。
が、女性のファラオという通例を作らないようにする政治的側面からの行動であると言われている。
実際、トトメス3世はハトシェプストの作った神殿やオベリスクを破壊したわけではないし、神殿の付近からはハトシェプストとの関係を示す像も発見されている。
憎むべき対象であるならばそのような像まで残すことはしないだろう。
というわけで、近年では両者の関係はおおむね良好だった、と考えられている。
また、ハトシェプストが権力を握っていたことは思わぬ形で目を出す事になる。
長い間軍事に力を注いできたトトメス3世は「エジプトのナポレオン」と称される軍事の天才で武力を持ってエジプトに繁栄をもたらしている。
もしかすると、ハトシェプストはトトメス3世の軍事的才能を見抜き、その才能を開花させたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます