第22話 数十年越しの復讐劇 前編

「やられたらやり返す、倍返しだ!」のフレーズで一斉を風靡した『半沢直樹』。僕はリアルタイムで見ていないのだが、続編をやって欲しいと思う。

個人的には、『リーガルハイ』の続きが見たいのだけれども。

そんな「倍返し」に因んで(?)、今日は孫臏の話をしたい。孫臏は、『孫子の兵法』の作者として考えられている孫子こと、孫武の孫である。

長い間、『孫子の兵法』は孫臏によるものではないかと考えられてきたが近年、『孫臏兵法』が発見された。

このため、『孫子』は孫武の手で書かれたと言うことになっている。もっとも、実在の人物かどうか、という疑問は残っているのだが。

さて、孫臏は孫武の孫と言うだけあって軍略に優れた孫武に劣らぬ天才であった。

そんな彼に悲劇が訪れる。

同門で魏に仕えていた龐涓の罠に嵌り、足切りの刑に処せられ、額に入れ墨を入れられてしまう。

しかし、魏にやって来た斉の使者に紛れ、密かに魏を脱出することに成功した。

ここから彼の壮大な復讐劇が始まる。

斉にやって来た孫臏は斉の将軍であった田忌の食客として迎え入れられる。

食客というのは金持ちが自分の家に住まわせている人のこと。

いわゆる、居候の身なのだが、彼等は皆何かしらの才能を持ち合わせている。

その為、主人の危機には自らの才能を発揮して主人の危機を救うのである。

ある時、田忌は斉王と公子と共に賭け競馬を催した。

双方、上等、中等、下等の馬三頭を出し、勝負するというものである。

孫臏は主人を勝たせる為に作戦を提示した。

「相手の上等にこちらの下等を、相手の中等には上等を、相手の下等には中等の馬をお出しください。さすればこの勝負、勝てるでしょう」

彼の言う通りに行って大金をせしめた田忌は孫臏を斉王に推挙して斉の軍師となった。

その後、魏が隣国の趙を攻撃、包囲された趙は斉に救援を求めた。斉王は救援として田忌と孫臏を趙に派遣した。

行き先は趙であったが、孫臏は「絡んだ紐を解く際は無闇に引っ張らない方が良いと申します。喧嘩を止めるのであれば、争いに加わるべきではございません」と趙には攻め込まず、あえて魏本国を攻撃した。本国には老年の防衛兵しか置いてなかった為、本軍は慌てて包囲を解き引き返したが、疲労困憊だった為に斉に大敗した。

これを桂陵の戦いと言う。

『孫子』には敵同士が争っている土地にはあえて触れず、計略を持って奪い取る事を提言している。

孫臏はこれを応用して魏と趙が争う土地を避け、敢えて魏本国を攻めるという奇策に打って出た。その為、勝利を収めるに至ったのである。

後編に続く・・・

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