第20話 張儁乂の華麗なる人生
始めて三國無双に触れた時、この人だけはちょっと操作したくないと思った人物がいる。張郃だ。
三国時代に似つかわしくない鉤爪という武器にナルシストな性格に、なんだかおかまっぽいビジュアル。
本当にこんな人がいたのか、と本気で信じ込んでいた。
何より、名前はおろか、字の儁乂が読めなかったので、不気味な人という印象があった。
今でこそ、ゲームの中で普通に使っていられるが、当時はそんな気は起こらなかった。
また、横山光輝の『三国志』の張郃は不遇な扱いを受けている。
特に漢中を巡る曹魏と蜀の争いでは、戦いに出たら負けるわ、勝ちに乗じる味方を諌めると聞いてもらえないと情けない姿を晒している。
ここまで酷いとなると、同情したくなる。
有能な人材を手元に置きたがる人物コレクターこと、曹操の目の付け所は節穴なのか?と疑問が浮かぶ。
だが、そんな張郃は魏の五大将軍に数えられる名将として知られている。
正直、ゲームや漫画と史実のギャップが一番大きかった武将の一人である。
あのナルシストな性格からはとても想像しにくいのだが、彼は劉備さえもが恐れた将なのである。
定軍山の戦いで夏侯淵を討ち取ったと報告があった際も彼は「張郃を討ち取ってはいないか?」と聞いたと言われている。
将軍の死が将兵の動揺を誘うことをしっかりと理解していた彼は定軍山をあっさりと捨て、防衛線の立て直しを図っている。
史実では戦上手とされている劉備が警戒したと言うのだからその名将は天下に響いていたように思われる。
また、北伐では司馬懿と並んで諸葛亮に立ち塞がった強敵の一人である。
これらは魏を正統とする『三国志』の記述なので、どこまで史実でどこまでフィクションなのかはわからない。が、降将の身でありながら武功を立てていることを考えると、やはり只者ではなかったのだろう。
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