第17話 ブサイクはステータス?
現実世界でも小説の世界でも顔のいい人はとことんモテる。中国の歴史小説身体に美しい刺青があるとなお良いらしい。
逆に顔が悪い、特にブサイクだと嫌われる。が、『水滸伝』に登場する矮脚虎こと王英だけは例外のようである。
矮脚虎とは、その名の通り足の短い虎という意味で作中でも体格は最も小柄な5寸。それでいて短足なのに加え目つきが悪い。
余談だが、清風山の好漢は皆、容姿が特徴的で大将の燕順は錦毛虎(髪の色と目つき)、鄭天寿は白面郎君(美男子)と、容姿がそのままあだ名になっている。
さてただでさえブサイクな王英は困った事に無類の女好き。
作中で三回、女性に鼻の下を伸ばしている。
初めは清風塞の長官、劉高の妻。
これはたまたま捕らえた侍女と共にいたので王英は彼女を妻にしようとした。
が、嫌がる妻を哀れに思った宋江が諌めたので泣く泣く清風塞に返してやる事にした。が、彼女は夫に宋江の存在を密告、恩を仇で返されることとなり、宋江は一度は軍に捕らえられてしまう。
その後、どうにか宋江を助け出し清風塞を攻略すると王英は劉高の妻を捕らえる。
そして、命だけは助けてやるから妻になってくれと、彼女に頼み込む。
どうやら、まだ諦めきれない様子。
そこへ、彼の兄貴分である燕順がやってやって来た。
「こんな淫婦、殺してしまえ!」と有無も言わせず、王英の目の前で殺害してしまった。
王英は激怒して彼を殺そうとしたが、宋江が「いずれ嫁を紹介するから」と何とか取りしてその場はなんとか収まった。
その後、梁山泊に入山した王英は祝家荘との戦いの最中、一丈青のあだ名を持つ扈三娘と一騎討ちの場面で遭遇。
ここでも、女好きの性格が災いして美しい容姿に見とれ槍が鈍くなったところをあっさりと生け捕られる。
本気でやってもおそらく、王英は彼女には勝てないだろう。
しかし、容姿に見とれて捕まるとは。
その後、王英は助け出された。
そして先の約束通り、宋江のとりなしで二人は結婚する事になった。
かくして、醜夫と美人妻というデコボコ夫婦が誕生した。
しかし、扈三娘は嫌がったという話はない。
そもそもこの時代、女性の地位は低く、自由結婚はほとんど認められなかった。家と家の繋がりが何より重要だった時代なので、断れなかった。
だが、結婚後の二人は夫婦役として北京大名府に忍び込む、敵将を捕らえるなど何かと二人揃って勲功をあげることが多かった。
どうやら似合いの夫婦だったようだ。
が、こんな美人を妻に迎えても王英の女癖は治らず、田虎配下の女将軍、瓊英に鼻の下を伸ばし石飛礫で怪我を負わされている。
やはり男の性格は簡単にそう変わらないようである。
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