第9話 人肉饅、売るよ!

『水滸伝』が中々日本人に受け付けられないのは好漢達のモラルが今の日本人に合わないところがあると思います。

好漢達のやることは相手がどんなにクズだとしても、問題があることばかり。

「男と不倫したばかりか、義兄弟を貶めた妻(アバズレ)のはらわたを割く」、「金は後で払うって言ったのに悪口を言ったのでボコボコにしてやった。そしたら、無関係のかーちゃんを殺したので殺してやった」。

平然と殺しが行われていることに寒気がしてきます。

トップクラスの問題児、李逵は「仲間にして欲しいと命令されたから無関係の子供を殺した」

正直言って、全員、擁護出来ません。

これが、一部の人間だけだったらいいのですが、宋江も「金せびってきたから女を殺害」してますし、やり過ぎだろ。

その中でも「孟州の十字波で人肉饅を売る夫婦」、孫二娘と張青夫妻は初めて読んだ時、強烈なインパクトがありました。

人肉を食らうという習慣がかつて中国にあったのは知っていましたが、まさかそれを商売にしているとは思いもしませんでした。

「夫婦で好漢だと、大抵女の方が強い」の例に漏れず、張青はあまり大したことがありません。

前職は野菜畑の番人ですが、二娘のお父さんから武術を習い、追い剥ぎをするようになりました。

あだ名の方は前職の菜園子って呼ばれてますけどね。

武術では母夜叉と呼ばれている孫二娘に到底及びません。

が、思慮深い(金目の旅人は殺すので完全に思慮深いとは言えない)ので好漢や囚人、坊さん等は殺さないように妻に注意しています。

にも関わらず、二娘は軽率で武松だけでなく魯智深にも薬を盛るなど見境なく殺そうとします。

でも、それが幸いして武松は後々救われることに。

入山した後は旦那を差し置いて顧大嫂、扈三娘とともに出陣してます。特に勲功を挙げてるというわけでもないのですが、扈三娘は武家の出身なのに脇を固める二人、ただの酒屋経営者なのに普通に戦に出るとか強過ぎだろ、と思います。

女は強しとはこのことをいうんでしょうか。

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