とあるホームレスの話

大福がちゃ丸。

とあるホームレスの話

 よぅ、俺に何か用があるのかい?

 無いんだったらさっさと消えてくれねぇかな、おりゃ酒が切れて機嫌が悪いんだよ。


 あ? 聞きたいことがある? ……なに? 酒をくれる? そりゃありがてぇ! なに? 金もくれる?!そりゃすまねぇなぁ、へっへへへ。

 何でも聞いてくれよ、旦那、何が聞きてぇんだい?

 あ? 写真? こいつはアンザイ、それにフジサワとモリタ……あぁ知ってるよ、クソ野郎どもだ。

 こいつらが、死んだときの話? 知らねぇ! 知らねぇ! 警察に話したぜ、おりゃ関係ねーし、そんなのは知らねぇよ、他には話すことなんてねぇよ。

 いてぇ! いてぇよ! 殴らねぇでくれ! クソ!わかったよ!


 あ~……だけどよぉ、あまり話したくねぇんだよ……

 できればよぉ、思い出すのも嫌なんだよぉ……

 わかってる!わかってるって!殴らねぇでくれ!酒も飲んじまってるし話すよ……


 この辺の山によぉ、産廃業者が色々なモンを捨ててくところがあんだよ。

 不法投棄ってやつさ、それでよぉ、俺たちゃそれを拾いに行くのさ。

 中にはよぉ、金になるモンが結構あるのよ、ステンレスの浴槽なんてお宝だぜ、へへっいい金になったよ。


 アノ日もよぉ、俺たちゃ4人でそこに行ったのさ。

 それでよぉ、金庫を見つけたのさ、でけぇ金庫だぜ!

 そりゃ、捨ててあるんだ中なんか入ってねぇだろうさ、だがよ、万が一ってのがあるだろ?

 あぁ、開けたさ、いや開いてたんだよ、まぁ、中を出してから捨ててるんだろうから開いてても不思議じゃねーけどよぉ、投げ捨てられてひしゃげてたしな。


 そしたらよぉ、入ってたんだよ中によぉ。

 本だよ、ベルトみたいのにぐるぐる巻きにされてよ、入ってたんだよ。

 革張りの分厚い本さ、巻いてあるベルトについてる金具も金みたいだったしよぉ、ピカピカしてたぜ。

 それでよぉ、アンザイの野郎が独り占めしようとしたんだよ、「これは俺のもんだ!」ってよ、俺たちゃ怒ったね「ふざけんな!」ってな。

 なに?それで殺したのかって? 冗談じゃねーよ! あんな野郎殺す価値もねぇ、3人でボコボコにしてやったけどな、へへっ。


 それでよぉ、俺たちゃどんな本か中を調べようって話になったのさ、革張りの本なんて金持ちが買いそうじゃねぇか、よぉ、そう思うだろ?へへっ。


 そしてよぉ、へへっ、フジサワのやつがよぉ、その本を締めてたベルトを解いちまったんだよ……フヒッ、本をよぉ、フヒヒッ、開いちまったんだよ、ヒヒッ。

 薄気味の悪い絵とよぉ、訳の分からねぇ文字がよぉ書いてあったんだよぉ、ヒッ、見てるとよぉ、頭がぐるぐるしだしてよぉ。

 よぉ、あんた、ヒッヒヒッ、どうなったと思う?フヒッ。


 金庫の中からよぉ、煙が出てきたんだよ、それと酷い臭いもな、わかんねぇだろ?本しか入ってなかったのによぉ、煙だよぉ、すげー臭いもだよぁ、俺らもくせぇけどよぉ、こんなもんじゃねぇんだ、まともに動けなくなる臭いって何だと思うだろ?何かが出てきたんだよぉ、金庫からよぉ。

 ゲホォゲホォ、すまねぇ興奮しちまってよ……


 それでよぉ、金庫の一番近かったフジサワがよぉ、あいつにやられちまったのさ。

 煙の中からよぉ、あいつが、あいつが出てきたんだ、なんかよぉ舌みたいなもんを伸ばしてよぉ、フジサワのやつに、ヒヒヒッヒッ、信じられるかい?ぼろ雑巾みたいによぉからからに絞られて死んじまったんだよぉ、ざまぁねぇだろ?ヒヒッ。

 でもよぉ、怖くて体は動かないしよぉ、クセェ臭いで頭はくらくらするし、これで終わりだってみんな思ったね、実際、やばかったのさ、ヘヘッ。


 次にやられたのは、アンザイだったよ、最後にモリタ、みんな干物みたいになって死んじまった! 食われちまったのさ、あいつに!

 俺? 俺が何で助かったかって? 本だよ、忌々しいあの本! 野郎どもが食われてる間に閉じてベルトで縛ってやったのさ!元通りにな、ヒヒッ、おりゃぁ生き残ったのさ!

 ヒヘヘヘッ、えぇ? どうだい、どうなったかって話はおしまいさ、俺は生き残って屑どもは死んだんだよ、ヒッヒッ。

 本はどうしたかって? さぁな、覚えてねぇよ、山ん中にあるんじゃねーかな?

 え? おい、あんた、それをどうした?! 隠してあったのに何でっ持ってんだ!

 返せ!俺のだ!返せ!返せ!かえせ!


 おい、あんた、顔が……

 あんた、あんたなんだよ?なんなんだよ。

 何開いてるんだ! 閉じろ、あいつが、あいつが来る、あいつが!

 ク、クセェ! あいつが来る! あぁ! だめだだめだだめだ!

 あいつがあいつが隅から……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とあるホームレスの話 大福がちゃ丸。 @gatyamaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ