ペルールとマヤ

 銀ムテはシリアスなお話だが、ひょうきんなキャラも登場し、コミカルなお話もわりとある。

 四幕の中盤はとても暗い話が多く、気分が滅入ってしまうほどだが、その中で、作者や主人公のサリサにとっても、もしかしたら、読者にとっても、心穏やかになれる存在が……もしかしたら、巫女姫ペルールかも知れない。


 銀ムテのお笑い担当は、リュシュなのだけれど、この頃の彼女はすっかり機嫌を損ねて黙々と仕事をこなしており、お笑い担当とはなりえない。

 エリザとラウルの仲が決定的となり、サリサは心休まる機会がなく、心病で死んでもおかしくない状態……それを和らげてくれる存在が必要だった。

 そこで、一息つけるようなお話を考えた。

 それが【巫女姫ペルール】だ。


 ムテらしい能力にかける普通の少女・ペルール。

 しかし、自分の信じることにまっすぐで、生き方も積極的で、ぐいぐい人を引っ張っていくような、どこかたくましさを感じる。

 彼女の明るさは、きっと、心病すら癒すだろう。


 そして、この話には、全くの悪人がいなくて、それぞれにやらかすことに理由があって、ほのぼのしているところも、書いていてホッとする。

 ペルールの両親も、短絡的な考え方だけれど、娘の将来を憂う優しい親だし、想い人のピエルも、辛い過去を背負っているとはいえ、優しそうな人だ。

 皆、どこか庶民的で等身大で、それでいて、明るい。



 そして、次に続く【巫女姫マヤ】は、それとは正反対の、ちょっと女のドロドロした本性、その誘惑に勝てない男の弱さを書いたもの。

 この作品を書いた頃、どうにか、少し官能的なものも書けるようになりたい、と必死に努力をしていた頃(?)で、でも、そもそも自分が官能小説を苦手としていて読めるほうじゃないので、必死に人から学ぼうとも思わず、匙を投げた思い出が。

 おかげで、マヤとサリサの濡れ場シーンはほぼ読者の想像にお任せ状態。それはそれでよかったのだろう。

 思い切って書いた作品もあったが、再公開にあたってあまりに稚拙に思い、削除したものがほとんどだ。本当はあるべきもの、必要な作品もあったのだが。


 一見、優しく穏やかで聡明な女性であるマヤが、その実、したたかで強い部分を見せる話。

 その術中にはまり、翻弄されるサリサ。

 ペルールの話が、サリサの内面の優しさを引き出すものならば、マヤの話は内面の弱さをさらけ出す話。

 ダークな話で、こんなサリサは見たくない……と思う読者もいるかもしれない。

 だが、私の中で、全てに完璧な人はいない、誰もが弱さを持っていると思うので、サリサの弱さも描きたかった。

 ……とはいえ、私がまだ思春期の女性なら、こういう弱さはかけなかっただろう、今の無双キャラブームは、若さゆえに通じるのかな? と思う所以だ。

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