何も出来ないことは、無謀な行為よりも、ずっとましだ
「おい、大丈夫か?」
ギルティはフロルの腕を掴み、盗賊の下から引きずり出した。
フロルは盗賊の死体を見て、絶句し、フニャリと体の力が抜けてしまった。
「身のほど知らずもいいところだ。他の人を見習え。何も出来ないことは、無謀な行為よりも、ずっとましだ」
(エーデムリング物語三章・結界弱まるより)
盗賊に対し、何もできずに、子供が連れ去られようとしているのを遠目で見ているだけの村人たち。
どうにか助けなくちゃ! と、飛び出していったフロル。
正義感の強い彼女は、エーデムの民が何もしないで見ているだけであることに、腹を立てた。
が、ギルティはそれに対し「他の人を見習え」と言う。
この言葉は、フロルを傷つけただろう。
「何も出来ないことは、無謀な行為よりも、ずっとましだ」
というのが理由。
なぜこの言葉が好きかというと、やはり、その後のギルティを書く上で、とてもいい指標になったからだ。
彼は、ひたすら戦って血を流すことが好きな種族ではあるが、無駄な血を流すことを嫌い、実に合理的で無駄のない行動をする。
それには、自分の力量を見極めて、決して失敗しない、という選択をしている。だから、彼がすることは、ほぼ、100%成功するのだ。
後先考えず、感情のまま動いてしまうフロルを、半ば呆れてしまったわけだ。
私の好きな漫画に「無謀は無能がやることだ」というセリフをはく戦闘狂がいる。彼は、「無理はするな」と言われ「無理などしたことがありません」とも答えている。
偶然ではあるが、戦闘に優れたものは、無謀な行為はしないものなのかもしれない。
だが、そんなギルティがフロルに惹かれていくのも、この身のほど知らずなほどの正義感、まっすぐさゆえなのだろう。
彼は、呆れつつも、前向きで明るくて理想に突き進むフロルが、気になって仕方がなくなる。
恋というのは、合理的にはいかないものだ。
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