遠乗り&影の功労者


『陽が沈む時』では、ほんのちょい役でしかないレサ。

 終盤、彼女は主人公であるセルディの彼女となるわけだ。けして軽い存在じゃないはず。が、私の中では、存在が軽かった。

 そんなレサを不憫に思ったのか、読者から「レサを主人公にした番外編が読みたい」とリクエストがあった。

 それで書いたのが、後に『火竜と呼ばれた少年』というくくりになるほど、たくさん書いたセルディの番外編となる。

 とはいえ、カクヨムに公開した際は、大きくくくらず、バラバラに公開することにした。

 理由は、番外編という読み方で読んでもらわないほうがいいのかな? と思ったのと、本編とは全く違う明るい作品が多かったから。

 後の悲劇を思えば、その明るさが切ないので、悲劇を知らずして楽しんでくれる人がいてもいいのでは? と思ったのだ。


 レサは、優等生の女の子で、エーデム族そのもの。

 孤児で城の下働きをしながら、勉強もしているという絵に描いたような努力家で、優しい女の子。

 リューマの仲間たちは、最初は彼女を妬んでいじめようとし、その後、彼女を自分たちの姫君として大事にした。

 とくに、タカは天涯孤独で荒んだ少年だったので、レサを崇拝することで、ずいぶんと心の支えになっただろう。

 だが、レサの心はセルディのもの。

 彼女は、セルディのエーデム族の一面に恋をしたから、ウーレン族らしい行動や考え方、そして、後にリューマ族として生きて行くことを決意したことに、どんどん傷ついていく。


 そんな関係を、エーデムにいた頃の幸せな思い出の一ページとして切り取った。

 それが、この『遠乗り』であり『影の功労者』である。


 この話を書いていて楽しかったのは、やはり、馬をいっぱい書けたことだ。

 馬に乗っている者でなければ、書けないんじゃないかな? と思う部分もあり、ほくそ笑みながら書いた。



 最初に公開した時、それはセルディがずるいでしょ? という感想をいただいた。

 確かに、普段は思わせぶりな態度を取らないようにしているくせに、自分が傷つくと、レサに思わせぶりになる。

 今回もそうだし、別に書いた百合の花のエピソードもそうだ。

 それが、『偽愛』を書くきっかけにもなった。


 セルディを愛するレサ。

 セルディは、レサを愛していない。

 でも、どこかで自分の傷を埋め合わせるための、癒しの存在として、必要としていたのも事実なのだろう。

 レサを崇拝することで、厳しい生活に癒しを求めていたリューマの少年たち。

 セルディの存在が、レサをめぐる恋の争いにブレーキをかけていて、いい間を保っている。

 セルディとレサとリューマの仲間たち。

 私は、その日常を描くのも好きだった。

 そこに、リューマ族長レグラスが加わった『花乱〜からん〜』は、ずいぶんと楽しい執筆だった。

 彼らの結末を知っていれば、ちょっと涙も誘うだろうが。

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