火竜と呼ばれた少年

思い入れのあるキャラ


 セルディは、アルヴィの対として、生まれたキャラだ。

 当初の案では、エーデムリング2の物語は、ウーレンの容姿に角が生えてきてしまった皇子の苦難を描く物語だった。

 混血は、両方の特徴が相殺されて薄まる……という設定だ。

 だが、フロルとギルティの子供が、両方の特徴を持っていたら? というところから、どんな事件が起こるのだろうか? と。


 アルヴィの初期設定は、ジュエルのようなキャラだった。大人しくていい子で特徴のないような……。

 ウーレンの容姿にエーデムの優しさを秘めたキャラ。

 そして、ウーレンを追われて、メルロイに助けられる、まではすぐに思い浮かんだ。


 だが、早々と煮詰まってしまった。

 ウーレンらしい、しかも愛されキャラの方が、エーデム族の角が生えた衝撃が大きいだろう。

 エーデム族のような優しいキャラが、ウーレンの民に愛されるとは思えない。その負の部分を背負って生まれたのが、セルディだ。

 海辺で泣いている銀髪の少年に、君の味方だから……というアルヴィの姿が、思い浮かんだ。

 その言葉にすがりつく儚げな少年が、後に、アルヴィの前に敵となって現れ、同じ海岸で命運を決する決闘に挑む。

『陽が沈む時』

 このシーンを思い浮かべた時、もうこの話のタイトルは、これしかない! と思った。


 陽が沈む時、それは、命運決する時。


 あとは、この仲良し兄弟が、どのようにして、追い込まれて行くか? を考えるだけ、それに読者が納得できる理由を添えて、仕方がない……と思えてくるようなエピソードを積み重ねるだけだ、と思った。

 が、もはや、ウーレンだ、エーデムだ、では、それだけの敵にはなり得ない、セルディをもっと強烈な敵にしなくてはならなくなった。

 ウーレンでもエーデムでも居場所のないセルディ。それは、リューマ族ではないか?

 しかも、純血魔族は魔の島の西に住んでおり、魔の島の東側は人間と交わって混血となったリューマ族の地だ。

 滅びの道を歩んでいる魔族は、まさに、東から昇る新しい光に追われ、沈みゆく太陽のようだ。


 かくして、セルディのキャラが固まった。

 こうなると、対照的にアルヴィのキャラも固まってきた。


 私にとって、二人とも思い入れのあるキャラなのだが、特にセルディは大好きだ。

 非常に複雑なキャラなので、書き始めは苦労した。

 だが、途中からはすっかり入れ込んでしまい、もう可愛くて、かわいそうで、泣きながら書いた思い出が。


 アルヴィは、誓い通りに天寿を全うしたに違いない。

 だが、セルディは夭折してしまったので、永遠に少年のままだ。

 だから、ずっと、少年のままの、繊細なままの、傷をもったままの、セルディを書き続けることができるんだな、と思った。











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