蛇巫女

因果応報・自業自得

 人を羨ましがり、妬んだりしたら、それは自分に返ってくる。

 そんな話を書こうと思った。

 なんと、中学生の頃である。


 物語のアイデアというのは、多分、このくらいの年齢の方が、豊かなんだろうなぁ、と思う。

 大人ではないし、子供でもない。

 昨日書いた文章を読み返すと、幼すぎて恥ずかしいような年代だ。

 それだけ成長も早いと言えるけれど、同時に、その時その時の気持ちを、ストレートに飾り気もなく書けたのだろう。

 もっとも、この頃の私は、文章を書くことは滅多になく、書くことは非常に悩んでいたりして、発散したくて書くしかなかったことばかりであり。


 が、その時に考えたのは、まぁ【王子とこじき】のようなもので、そんなにダークでも深くもなかったと思う。

 人間のドロドロした部分も知る年齢になり、書くことができた作品だと思う。


 読者から、風香があまりに不憫だ、と感想をもらった。


 だが、どうなのだろう?

 風香は、かわいそうなのだろうか?

 私にはわからない。


 当初、風香の育ての親はいい人たちにしようと思った。

 そのほうが、風香が姉に嫉妬し、欲に目がくらみ、人の道を外れていく様が鮮やかなのでは? と思えた。

 純粋で素朴な田舎娘が、華やかな生活を目にして、転落してゆく……そんな話にしようと思ったのだ。


 ……が、私にはそこまで痛い話は書けなかった。


 悪に転落するには、やはり、悪の因子があり、転落するだけの理由があるもの。

 風香にも紅蓮にも、蛇巫女たる因子があり、それが目覚めるか目覚めないか、の差しかない。

 結局、二人は、それぞれの醜い努力を重ね、互いの立場を入れ替えただけ。

 因果応報・自業自得の話だ。


 少なくても風香は自分を不幸だとは思っていないだろう。

 人の道を外れても成功をつかもうとして、成し遂げた人間が、自らを不幸とは思わないように。



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