一角の森

作中で感想を語り合う

『一角の森』は、エーデムリング・シリーズではあるけれど、全くの独立作品だ。

 たまたまその世界を舞台にしただけで、別の異世界にしてもよかった。

 ……が、エーデムの世界にいる純血種は、ウーレンとエーデム、ムテくらいしか活躍していないので、別種族を出してみようか? という気持ちもあった。


 一角種の初出は『エーデムリング物語=二章・裏切りの街だ。


 一角種の女はめったに見られない。何故なら成人するとそのまま角が大きく伸び、大木になってしまうので動けなくなるそうだ。今のうちにおしゃれをしておこうというのは、まさに女心だろうか? 宝石屋にたむろしている。


 という記述がある。

 なんともまぁ、残酷な成長を遂げる種族だけれど、その反面、なんとなく俗っぽさもある。


 次に『陽が沈む時』に一角獣の姿で登場している。セルディとやりあって負け、血読みをしてみせた。

 特殊性から、他の種族とあまり交わらず、純血を保ちやすかったのか、能力も高めらしい。

 こういった変わった種族を作りたがるのは、萩尾望都の影響かも知れない。


 さて……。


 この作品、急遽、公開しようと思いたった。


 というのも、もうすぐ公開の銀ムテの『さようなら』のエピソードの中で、エリザとサリサが、この物語の感想を語り合っているシーンがあるからだ。

 実際、『さようなら』を公開した時には、すでに、『一角の森』は完結していて、おそらく、読んでいる人も多かったから、ああ、あの話か……と、一緒に感想を語り合う気分になった人もいるかも知れない。

 だから、実際、読む・読まないはおいておいて、公開しておいて、どんなの? と思ったら、読めるようにしておいたがいいのかな? と。


 銀ムテの中で、この作品はどうやら実話らしい、ミラは実在した踊り子という設定だ。

 悲しい結末だ……と嘆くエリザに対し、サリサはこう言う。


 現実という物語は書き直せない。

 でも、幸せな結末になるまで、どこまでも書き足せる。


 嬉しいことに、当時、この言葉をまるで名言のようにブログで取り上げてくれていた人がいて、ちょっと照れた思い出が。

 自分の作品を墓碑銘を刻むがごとく……と書いたけれど、そうやってどこかで誰かの心の中に残ってくれるというのは、書いたかいがある。


 どの作品も、私には思い入れのあるものばかりだが、それを他人に押し付けちゃいけないよな、というセーブも働いている。

 作者のエコヒイキを打ち捨てて、どうにか客観的になろうと、心がける。が、心がけるあまりに、自虐的になることもある。


 それが、銀ムテの中のリュシュの感想だ。


「あ、その本、読んだことあります。でも、私、そういった悲しいお話は大嫌いですから、家の暖炉にくべちゃいました」


 一生懸命書いた私の作品を、暖炉にくべるとは、とほほほほ……。

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