狩人の時節

初めての二次創作

 思い入れのある作品だ。


『指輪物語』ファンの仲間から、双子エルフのお話を書いて欲しい、とリクエストを受け、書いた作品。

 作品としては、そのまんまの方が優れていたかも知れない。

 映画の名シーンや名言をそのまま用いて、ファンが思わずニヤリとしたくなるような場面を書いたりした。エルフ語も満載だった。


(---引用---)


 しかし彼女の兄たち、エルラダンとエルロヒアは諸国遊歴に出かけていて留守でした。かれらはオークの洞穴で母が苦しんだことをけして忘れず、北方の野伏たちとともにしばしば馬を進めて遠征しました。


(---引用---終わり・指輪物語)


 初めて指輪物語を読んだ時、この部分に違和感を持った。


 あまりにも虚しくはないか?

 彼らは、オークへの憎しみのみを糧にして、中つ国で生きているようだ。

 相手がオークとはいえ、これではまるで殺戮マシーン。

 しかも、その切なさに気が付いてもいないかのよう……。


 その感想から、この二次創作はスタートした。


 一緒に復讐をする少女を絡め、初恋物語を絡め……。

 少女の名前は、スミア。これは、ゴラムの名前のスメアゴルから取った。

 映画の中の、ゴラムとスメアゴルのやりとりを参考に、理想と現実で葛藤する少女を描いた。


 彼女は、エルラダンに恋をするが、ハッピーエンドにしなかった。

 最後は、映画のシーンを絡めて「ナマリエ」と言って別れる。

 これは、双子エルフ・ファンの人たちに遠慮したのもある。

 私が創作した女性キャラとくっつけてしまうのは、夢を潰す、と思ったのだ。

 ……が、私の描く可愛くない女性キャラの中で、スミアは愛されキャラだったようで、ラストを残念がる人も多かったように思う。



 映画【ロード・オブ・ザ・リング】が全て公開され、ブームが一段落した頃。

 お借りしたキャラや世界観をオリジナルに置き換えて、加筆し、再公開した。

 ……が、ただ入れ替えただけでは、オリジナルである二次作品には敵わない。

 指輪の世界を少し残しつつ、全く、別世界・別キャラを再構築する必要があり、真っ白から書くよりも、むしろ、大変だったかも知れない。


 やはり、私は一次体質というか……。

 二次作品は、どうも、ファンの方々に喜ばれると同時に、気分を害するかも? という不安があり、苦手かも知れない。


 エルフは、光戦の民というオリジナルに置き換えた。

 戦いのために生まれたような民は、平和な時代になって、生きがいを失い、この世界を去る。エルフとにた部分を残しつつ、どこか、心を病んでいるような?

 敵を憎み、復讐に燃えることで、この地に留まっている兄弟。


 ただ……。

 オリジナルに書き換えたことで、最後の最後は、最後まで迷った。

 公開するその日まで、ラストを迷っていた。


 ハッピーエンドじゃないの? と、がっかりする人が多かったのだ。


 スミアは、健気で一生懸命な少女で、誰もが彼女を応援したくなる。

 ところが、ラストはお別れなのだ。

 ハッピーエンドも考えたのだけれど、永遠に変わらない戦士とこれから成長するだろう少女の恋を成就させるのは、この話にはそぐわない、と思った。

 が、いつか、再び巡り合って、その時は結ばれるかも知れない、という予感は残したく思った。


 エルフじゃないから「ナマリエ」はない。

「さようなら」「また会おう」「いつかまた」という別れの言葉から「愛しています」「愛しい人よ」という告白まで。


 実は、まだ、これだ! というセリフが思い浮かばない。





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