三幕はダーク?

 銀ムテの三幕は、上下で完全に雰囲気が違う。

 上は、決して楽しい展開ではないけれど、ややコミカルな面もある。

 フィニエルという人気キャラがいなくなってしまったが、代わりにリュシュというキャラが、この作品にコミカルな要素を運んで来てくれて、どんどんダークになって行く部分を緩和してくれた。


『マール・ヴェールの石段・上り』は、封じられた話というテーマで番外編を書くという企画があり、番外編として書いたものだった。

 だが、本編の執筆がそこまで至っていなかったため、番外編を書き換えて本編に組み込んだ形だ。


『霊獣の夢』は、もののけ姫に出てくるシシ神をイメージして、ほのぼのした気持ちで書いた。

 本筋にあまり影響のない枝葉のような作品だが、霊山のイメージを膨らませるのに、自分の中で役にたったし、好きな小作品だ。


 そのまま、ほのぼの展開になるのか? と思いきや、下になると、いきなりの長編。

 銀ムテの中では、原稿用紙換算で300Pを越える長編がいくつかあるが、『巫女姫の悲劇』は、かなりの長編になる。

 そして、今までは嫌なイメージしかない巫女姫サラの視点にも立っているので、非常にダークだ。

 ……が、キャラとしては好きではないけれど、サラという立場には、私は随分と同情してしまった。

 少し前に、カヌー選手でライバルを陥れた事件があったけれど、まさに、手に入れたいものに手が届かない、それしかないとなると、人は間違いを犯しやすい。

 そして、自分の中に汚いものを内包しながらも、それを押し込めて、どうにか清く美しく生きる自分でありたい、と願うのも、自然なのかな? とも。


 ほのぼのしたものを書くのは楽しい。

 でも、私の本質は、どうもダークでドロドロしているらしく、暗くて重たい作品ほど、本筋に近くなるように思う。

 悲劇を通じて、エリザとサリサはより近い存在になってゆくが、同時に、三幕最終話の『さようなら』に通じる。

 実は、以前、エリザは嫌いなキャラと書いたが、『さようなら』のエリザは、潔くて好きだ。


 女性には、守られたい、守られた中でぬくぬくと幸せを感じていたい……という、囲われ者願望が、どこかにあると思う。

 実際、そういう境遇に陥る主人公を描く作品も多く、好まれるように思う。

 だが、エリザはそれをよしとはせず、守られるだけの存在からの自立を目指し、自らの存在意義を問いつつ、生きようと決意する。

 先にも書いたが、エリザにとって、祈り所の闇や霊山は死の象徴で、ここに留まることは自らの生きる意味を否定することなのだ。


 三幕の終わりは、サリサ同様、読者にとって悲しい結果かもしれない。

 だが、作者としては、ただ守られるだけの存在からの女性の自立、自分らしく生きるための束縛からの解放、という爽やかな別れ、と感じている。

 そして、この別れとその後のエリザの成長と苦悩があってこそ、『漆黒のジュエル』以降の二人がある、と思っている。


 三幕から、ジュエルが登場する。

 で、慌てて『陽が沈む時』を完結させるべく、アップを急ぐことにした。

 多分、銀ムテは銀ムテで読んでいる人が多く、エーデムから流れてくる人は少ないんじゃないか? とは思うものの、やはり、ネタバレ作品を先に出すのもねぇ。


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