第二幕は……

 銀ムテの第二幕は、サリサとエリザが別れて、会うことも出来ないという状況から、二人のラブラブ……からすると、見所がない。

 だが、銀ムテにおいて、ツボ中のツボになる、とても大事な作品がある。


『祈りの夜』だ。


 何もすることがなく、ただ、死んだように生きるエリザにとって、サリサへの思いだけが心の支えとなってゆく。

 だが、祈り所以外の場所では時間が流れ、エリザの知らないことがたくさんあり、霊山も変わりつつあり……そして、サリサには新しい巫女姫とその間に子供が……。

 あまりの辛さに一度は死のうとすら思ったエリザだったが、自分が巫女姫に選ばれた時の夢を思い出し、それを叶えるために、強く生きよう、と決意する。

 ……が、同時に、自分の精神を保つために自分自身で強い暗示をかけてしまい、サリサのことを忘れてしまったり、愛し合っていた事実を頑なに封印してしまうようになってしまった。


 このエリザの態度は、物語進行上のご都合主義っぽいな……と自分でも苦笑した。二人がラブラブでは『漆黒のジュエル』に結びつかない、という作者の都合が、おおいに反映していると。

 だが、書いているうちに、いや、これって、女性にはあるあるだろ? と思い始めた。


「愛しているかも知れない。でも、最高神官に身を捧げて一生を終える覚悟があるほど、愛してはくれていない」


 エリザは故郷に帰り、そこで癒しの巫女として貢献し、新たな恋をして、幸せになることを夢に見て、死を乗り越えた。

 祈り所の闇や霊山は死の象徴で、サリサの愛を受け入れるということは「最高神官に身を捧げて一生を終える」=死なのだ。


 女性は、一時的な熱情に左右されるよりも、結婚後の生活の安定や居心地の良さを考慮するところがある。

 それは、男性がいかに自分の子孫を残そうか? と動くのに対し、女性は子育てに有利か? のような、動物的本能が働くからだそうだ。


 つまり、エリザはのめり込むと辛い思いしかないだろう恋愛に飛び込む勇気がない、女性はそうして、結婚後に苦労しそうな恋愛は捨てて、二番目に好きな人と結婚したりするものだ。



 さて、二幕には……私が楽しんで書いた2作品がある。

『冬恋』と『誘惑は蜜の味』だ。

 なぜって……霊山かせいぜい麓の村くらいでしか活躍の場のないサリサが、外の世界へ旅立つ、銀ムテでは極めて珍しい2作品だからだ。

 サリサも、霊山を離れて、すっかりマリといいコンビを繰り広げる。

 極めて登場人物が少ない銀ムテの中で、新しいキャラを出せたことも楽しかった。

 マリ一家のその後、サリサのおっかさん的存在のシェール、エリザ一家。

 そして、この2作品には「愛だけではダメ、困難を乗り越える強さが必要」というテーマがあり、サリサとエリザに足りていないものを暗示している。



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