学び舎のギルティ
ドラゴンブック新世代ファンタジー小説コンテストにエントリーして、ちょいと困ったことが。
このコンテストは、読者選考によるランキング上位作品と編集部からピックアップされた作品が最終選考対象としてエントリーされるわけだが、残念なことに、ランキングなしでランダムに作品が紹介されていた時は、若干P Vが増えたけれど、ランキング表示になった途端、全くP Vが動かなくなり、このままでは上位どころか、最下位争いになってしまうかも知れない。
なんでまたこういう表示なんだ? これじゃあ、人気上位作品がどんどん有利になって行くだけで、かなりいい作品でも埋れてしまう、まぁ、もともと評判のある作品なら、ピックアップで拾われるのかも知れないけれど、そうじゃないものは、良作でも見つけられないだろうな……と疑問に思ったが、理由は知れた。
今はランキングの時代、良作でも読者が少ないのは困る。読者が多いということは、それだけ、すでに売れているようなものだからだ。
作者の売り込み、宣伝も実力のうち。
実際、私もサイトで作品を公開していた時は、更新するたびに、あらゆるところに宣伝に行ったし、読者の口コミも随分とありがたかった。
自分の作品というのは可愛いもので、書いた本人は名作だと思っている。でも、本当に読者にとって価値のある、貴重な時間を割いてまで読むべきものだったのかは、作者にはわからない。
私が思っている以上に、この作品を読んでくれる人がいたのは、私の必死な宣伝活動のせいだったのか、ありがたい読者の宣伝のおかげなのか、それとも、真にこの作品が名作であったのか、誰もわからないのだ。
……が、最初に書いたように、私は、もう「読んでもらえた? 読んでもらえない?」で、一喜一憂して、むしろ、書くことよりもそちらに気持ちが行ってしまうことに、疲れ果ててしまったのだ。
今もその気持ちに変わりはなく、多分、主催者が望むような商品価値のある作品を生み出すことはできず、ひたすら、読者受けよりも自己満足な作品を書き続けるだけだろう。
かっこよく書けば、私の作品は私の墓碑銘……燦然と輝く金字塔であれば嬉しいが、誰かがふと見ると、苔むした石に刻まれた読みにくい文字が散らばっている……そんな存在であっても、そこにあり続ければいい。
今回『エーデムリング物語』の改稿にあたり、その思いを作品に取り入れた。
僕は……悪い子かも知れない。
遠い昔に誰かが刻んだ、忘れられたこの物語を読みたいと思う。
風のように自由になって、どこまでも行き、真実を知りたいと思う。
そして、ミーアのように歌にして語り継ぎたい。物語を……。
(一章・銀の影 より)
まぁ、そんなことで、そもそもコンテストにはお呼びではない作品なのかも知れない。
とはいえ、苔むした墓碑銘を人知れず踏まれるだけでいいや、って気分ではない。
誰かの心を揺さぶる作品であって欲しいし、そのために読んで欲しいと思うし、私はまだ動画で動き回るギルティを見てみたいという夢も捨てていない。(笑)
なので、私なりの悪あがきをしてみる事にした。
『サリサの冒険』で削ったギルティのエピソードを書き直して、番外編として加え、作品を更新する事で、ほんの少しだけ「最新」表示がつく。
大した効果にはならないだろうが、ツイッターもフェイスブックもやっていないし、読みに来て! と頼めるような人もいないので、他にやれることもない。
しかも、まぁ、それなら私も書くことを楽しめる。
そもそも、このエピソードをどうにか番外編として書き直して公開したいな、と思っていた。だが、エーデムの他の番外編の中に入れるには、ちょっと異質な感じがしていた。
というのも、サリサが語るギルティの姿は、かなりシリアスで、かつ、本編に入れても成り立つような濃い話でもあり、とはいえ、外伝で別にするには、あまりにも短くて、わかりにくいものだからだ。
ふと、本編読了後の追補編のような形がいいのかな? と思っていた。
ギルティは、五歳でムテの学び舎に入れられている。
この頃、銀ムテの主人公であるサリサも、学び舎にいた。
この二人は、三年間にわたり、交流があったのだ。
そして……この頃のギルティをサリサは好いていなかった、という事も、もう語られている。
ギルティとアルヴィは、親子揃って、プチ・サリサと交流があった事になる。
十歳のプチ・サリサ、おそるべし。
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