銀のムテ人

こんな女は嫌だ!


 青は藍より出でて藍より青し。



 この作品は、まさにそういう作品になってしまった。

「漆黒のジュエル」という「エーデムリング物語」三番目の番外編として書かれた作品が、いつの間にか、本編を上回る反響をもらってしまい、最終的には四幕まである大長編になってしまった。

 読者の方からの推薦も頂いたが、その多くは

「本編を読まなくてもわかる、むしろ、この作品を読んでから、漆黒のジュエルを読むべきだ」

 というものだった。


「漆黒のジュエル」のラストは、子供のいない私には、別に不自然でも何でもなかった。

 これは、子離れの物語として書いたのだ。

 たまたま妹が子育て中で、多大な夢を子供にかけるあまり、現実を見ることができなくなっていて、家族揃って頭を抱えていた……という当時の状況が反映されていたのだろうと思う。

 だが、子供のためなら命も惜しくないような行動をしていたヒロイン・エリザが、最終的に子供を見捨ててしまうかようなラストに、激怒する読者もいて、驚いてしまった。


 それだけ世の中子供が好きな人が多いというか……子供は大切に……ってことか……。


 別に激怒されて落ち込んだ……ってことはありません。

 逆に、それだけのめり込んで読んでくれていたのか……とありがたく思った。が、問題は、私が書きたかったことが、この物語ではさっぱり伝わっていなかった……ってことなのだ。

 そこで、いくつかのエピソードを書き足した。

 でも、それでも不足だと思い、「初夜」という番外編を書いたのだ。


 当初は「初夜」でおしまいで、1年ほど何も続きを書こうとは思わなかった。

 だが、あまりにも興味をそそるタイトル(?)にしたためか、アクセス数が増え、しかも、あれだけ嫌われてしまったエリザも、女性の共感を得たような?

 そうすると、ほのぼのラブラブなささやかで可愛い初恋が、どんどんダークサイドに落ちていって、ドロドロになって行く様を、もっと描きたい……という欲求が、ふつふつと湧いてきた。

 ラストありき、なので、そこに矛盾が生じないよう、でも、これなら「漆黒のジュエル」の中のエリザも理解できる、となるように構想を練った。


 結果、エリザは、何事にも一生懸命に取り組む健気さ、女性の可愛らしさ、優しさに加え、ずるさ、視野の狭さ、思い込みの激しさ、差別的、などの欠点も持ち、ああ、よくいるこんなタイプ! と思えるようなキャラに成長した。

 長所が短所であり、短所が長所であるような……。


 ちなみに、私はエリザがそれほど好きではない。

 多分、身近にいたら、お友達になりたくないタイプだと思う。

 それもそのはず、私が感じる女のよくある嫌な部分を、これでもか! ってほどに盛り込んだキャラだ。

 だが、書き手としては、このような100%優等生じゃないキャラの方が好きだし、書いていて楽しい。

 

 

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