漆黒のジュエル
課題があるから進化する
問題作だ。
でも、この作品があったおかげで、『銀のムテ人』という愛すべき作品が生まれたのだから、めでたしめでたし……。
ただ今、『銀のムテ人』を完結させ、こちらに手を加えている最中なのだが……。
本当は『陽が沈む時』を先に公開するべきと思うけれど、書き終えないと、頭が切り替わらない。
実のところ、以前公開していたときから、『銀のムテ人』の最後2作は駄作だな、と思っていた。
書いていても筆が乗らず、何度も書き直し、ボツになった原稿も山ほど作った。
ほぼ一発勝負の私には珍しく難産で、しかも、出来が悪いとなると……年月を重ねて、客観的になればなるほど、読むに耐えない。
よくもまぁ、あれを人様に読ませようとしたなぁ。
よくない原因は、やはり『漆黒のジュエル』に繋げ、それを補うものを書こうとしたからだ。
『漆黒のジュエル』は、どちらかというと、エリザ視点に立っているから、サリサの強い想いはラストまでなかなかわからない。むしろ、飄々としたとらえどころのない人物に見える。事実、そのように書いた。
が、それが「え? どうしてそうなる?」という読者の戸惑いもあり、加筆したりした。さらに「銀のムテ人」を書くことになった。
だから『銀ムテ』の最後は、一部、『ジュエル』と重ねて、それをサリサ視点で描く……という形式をとっていた。
ところが……一度書いたものを別の語りで……というのは『銀ムテ』ではよくあるパターンではあるけれど、それを2作品続けて……では、どうも。
しかも、サリサの気持ちを延々と独白するような内容になってしまい、味わいがなくなってしまったのだ。
そこで、最初は『漆黒のジュエル』にサリサ視点を取り入れつつ、改稿しようと考えた。が……それはかなりの大仕事で、別作品を書くようなものになる。
しかも『ジュエル』を読み返すうちに、これは、むしろ、サリサ視点をどんどん削ったほうが面白いのでは? と思い始めた。
以前、改稿した部分を大幅に削り、新しいエピソードを入れて、ワクワクするような冒険談にしたほうが楽しい。
そして、『銀ムテ』のラストも、最後二作を大幅に削った。
『闇のジュエル』というサリサ視点の『漆黒のジュエル』と重なる部分を半分くらい削った。
読者は、えー! どうしてそんなことに? と戸惑うかも知れない。
でも、その種明かしは『漆黒のジュエル』にあるし、この作品を『銀ムテ』クライマックスと捉えれば、なんの問題もない。今までは、完全に別シリーズの別作品だったから、奇妙だったのだ。
ラストの『マール・ヴェールの誓い』は、最初、すべてカットするつもりだった。
でも、読み返して……3分の1くらいにして、エピソードの一部を『漆黒のジュエル』に移行して、残すことにした。
やはり、『銀のムテ人』という四幕構成の超長編に、良いエンディングマークを打ちたい、と思った。
……で、目下の悩みは……。
漆黒のジュエル =銀のムテ人=
銀のムテ人 =漆黒のジュエル=
漆黒のジュエル =エーデムリング物語=
の、どれにしようか? だ。
何れにしても、『漆黒のジュエル』には、今まで書いたような「今までのお話」は書かないことにした。
この作品は、一作で三度美味しい(?)味わいを残したい。
つまり……『銀のムテ人』を読まずに読んでも楽しめる、『陽が沈む時』から流れてきても楽しめる、『銀のムテ人』を読んできて、二人のその後を心配している人にも楽しめる作品として、描きたい。
単独で読んだ人は、ラストに戸惑うかも知れないが、どうして? と思えば、銀ムテを読めば納得できるだろう。
『陽が沈む時』から読んだ人は、リラやデューンの活躍が嬉しいだろう。
「銀のムテ人』から読んだ人は、その裏にあるサリサの心情に、他の人たちとはまた別の読み方が出来るのではないだろうか?
……と思うと、ワクワクしながら、改稿作業ができるのだ。
楽しいなぁ。
が、『陽が沈む時』がこの後に待っているのかと思うと……憂鬱だ。
あれは、私の大好きな作品ではあるんだが……ハマって鬱になるんだよなぁ……。
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