愛の歌をきかせて =エーデムリング物語外伝=
このお話を書いたわけは、『陽が沈む時』の連載中、多くの読者から「どうして!!!」という問い合わせがあったから。
『陽が沈む時』は、『エーデムリング物語』の2作目で、13年後からの物語で、主人公も代替わりしている。
そこに出てくるメルロイは……なんと、結婚していた。(笑)
しかも、そのお相手が……レイラ。
は? 誰? それ……と思う人もいるだろうが、『迷宮にて』を公開した直後くらいの連載だったから、「何で?」って人も多かった。
そう、レイラはセリスとの結婚話が出ていた、ベルヴィンの姫だ。
あんなわがまま少女とメルロイがどうして!!! と、誰もが思った。
そして……私も思った(笑)
メルロイは、由緒正しいエーデムの姫と結婚した。
……が、よくよく考えてくれ。
エーデム王族の大半は、エーデム陥落の夜、ウーレンによって殺されてしまい、ほぼ、残っていないのだ。
メルロイと釣り合うような年齢の女性が、ボコボコ登場するのはおかしい。
新たなキャラを作るのが面倒で(おい!)レイラならいいんじゃね? と、いい加減な理由で結びつけたのだ。
当然、読者は、えーーーーーーー!!! になった。
いや、迷宮事件の時は、レイラもまだ14歳で子供だったから……と言ってもね。
そこで、メルロイとレイラのなり染めを書いた。
それが、この『愛の歌をきかせて』だ。
当初は、もっと番外編っぽい作品だった。
作中にある「最愛の人にふられたかも?」の方がメインだったのだ。
メルロイの苦悩の原因は『陽が沈む時』に描かれているので、この作品には触れない方向で、そして、レイラというキャラが活きるよう改稿した。
タイトルも、コロコロと変わり、今の形に収まってから、やっと『愛の歌をきかせて」に決定した。
苦労した。
が、書いた時期が、一番筆が乗っていた時期だったので、まぁ、それなりに楽しい作品になった……と思う。
メルロイの初恋はフロルだった。
でも、恋というにはあまりにも呆気なく片思いに終わり、しかも親友のギルティに取られてしまう……という結末。
が、彼の好みは、フロルのような女性なんだろう。
レイラは世間知らずで、エーデム陥落の苦労も知らない。
フロル以上の平和ボケで、箱入り娘で、ひたすら貴族としてのしきたりを学んで育ったような少女だ。
そして、フロルのような意識の高さもなく、低い鼻を高々としているような態度で、好かれる要素は少ない。
が、風のように各国を周り、時に荒んだ現状も見て、心を痛めていたメルロイにとって、同胞の女性がこうも平和ボケ……というのは、呆れを通り越して、微笑ましたかったのではないだろうか?
最愛の人にふられた時、メルロイは自分の生き方に悩んだ。
この作品は、徹底してレイラ視点で書いているけれど、メルロイ側から書けば、また趣が変わってくるだろう。
メルロイの、当時の辛く厳しい状況を思えば、やはり、こんな平和ボケの困った女性は、愛しく感じるのかも知れない。
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