第2話 ふたりべや
一人になって、ひとときの自由を与えられた。
私は、そっと部屋の扉を閉じ、ベッドを整えながら部屋の中を観察した。
私の病室は、教室の隣の二人部屋だった。
二人部屋とはいっても、隣の四人部屋と広さは変わらない。
ベッドが減った分、広々と使えそうだ。
部屋の中央には机と椅子。快適に勉強ができるようにだろうか。
そして、隣のベッドの隅には、黒のランドセルとコピックが置かれていた。
あぁ、私より年下の子でも、精神疾患に苦しんでいるんだ。
苦しんでいるのは、私だけじゃなかったんだ。
不謹慎ながらも、少しだけ安心した自分がいた。
しばらくすると、小麦色の肌をした小さな女の子が部屋に入ってきた。少し遅れて、さっきの看護師の矢野さんも様子を見に来た。
新しく入院してきた佐倉さんよ、と矢野さんは私を紹介した。他人と目を合わせられない私は、よろしくね、と軽く会釈した。
「さくらちゃん、よろしくね!」
彼女の声はどこか弱弱しく、顔色を窺われているようだった。
時間は、午後三時を回ったころだった。
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