5話 「豚」

「おはよう」

 ふと目を開けると、そこには同級生の明石楼愛あかいしろあの姿があった・・・

「んげっ!なんでいるの?」

 すると楼愛はこう言った。

「だって空祐そう君をびっくりさせたくて・・・」

 うん、起きた瞬間びっくりしたよ。それに寝顔見られてた?あれこれ考えていると体が熱くなってきたから一度落ち着いてみよう。

 僕は布団から降り、今朝は雨が降っていたようで湿度が高くて汗をかいていたみたいだから一度シャワーを浴びることにした。

 シャワーを浴びた後にふと気が付いた。

「バスタオル忘れた。」

 どうしよう。取りに行ってもいいけれどリビングには楼愛が待機しているし・・・そうだ、通話ボタンで楼愛に言ってバスタオルを取ってきてもらおう。

「ろあ~。バスタオル持ってきて。」

「ん?あ、了解!」

 指折時間を数える間もなく廊下で足音が聞こえた。

 バタン

 ん、なんだ?

「持ってきたよ~」

 僕は声につられて顔だけを後ろに向けると、朝から元気な天使が天の羽衣を微笑みながら差し出している様子が鮮明に窺える。

「・・・え!?」

 それと同時に楼愛は何かに気付き顔を真っ赤にする。

「きゃー。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 そういいながら勢いよく風呂場のスライド式ドアを閉めた。

 そういえば今日はクラスメイトの月代温大さかやきおんだいと楼愛の三人でイグアナ探しの予定が入っていたな。捜索場所は河川敷だっけ?そろそろ温大に連絡して時間を決めないと、日が暮れてしまう。

「もしもし温大?」

「やぁ、おはよう伊月いつき君。今は八時だよ。」

 ん?いきなり時間の報告をされたよ。まぁ変わった人だからスルーします。

「今日の時間なんだけれど、九時に河川敷集合にしない?」

「いいよ!また、九時に河川敷で会おう。」

 電話が切れた。

 僕と楼愛はジャージに着替え、河川敷に向かう。

 三十分も前だけど、まぁ早く来ることに何のデメリットもないからいいか~

「ふぅ~、やっと着いたね。」

「意外と遠いなぁ」

 楼愛と二人でそんな会話をしていると河川敷にある小屋の裏から声が聞こえる。僕と楼愛は気になり小屋の後ろをそっと覗いた。するとそこには月代温大という少年の姿がはっきりと見えるが、周りには誰もいないのに何かを一人でつぶやいている。

「シュヴァイン、どこへ行ったんだよシュヴァイン。あああああああ」

 シュヴァイン?確かドイツ語で『豚』って意味だったような・・・もしかして、イグアナの名前?それに温大泣いているぞ。どうやら気がくるっているみたいだ。

「楼愛。今日はもう帰ろう。」

「え!?まだここに着いて五分も経っていないよ?それに月代君泣いているよ?放っておけないよ。」

 なんて優しい人なんだ。

「あ、伊月君に明石さん。まだ時間より早いのにどうしてここにいるの?」

「こちらからも質問させてもらうよ。どうして君は泣いているんだ?」

 もともと独特な世界にいる奴だが今日はなんだか様子がおかしい。目元にはクマができている。

「僕は昨日みんなとは別れた後からここにいるんだ。」

「「え!?」」

 楼愛と僕は声をそろえて驚いた。

「もしかして月代君一睡もしていないの?」

「そうだよ。僕はいち早くシュヴァインに会いたいし、二人にもなるべく時間を使わせたくないから・・・」

 こんな暑い中河川敷で一晩いたのか、大変だなぁ。え、もしかしてここを探していたのか?ここはサッカー場と野球場を作るといって先週末に一体を草刈りした場所だよな。もし温大がここを一晩かけて探していたとするならばかなり阿呆アホと言っても過言ではないだろう。

「な、なあ温大。もしかして君は一晩中こっちを探していたのかい?あっちの草が生えているところじゃなくて。」

「うん。そうだけれど、それがどうかしたのかい?」

「ねぇ月代君。イグアナは砂漠から熱帯雨林に生息するっていうことは知っていると思うけれど、たぶん天敵から隠れるために、こんなに開けた場所にはいないと思うよ?」

 よく言った楼愛。僕もそう言おうとしていたところだよ。

「そうだね。ならあっちの橋の下を手分けして探そうよ。僕は右の橋に行くから二人は左の橋に行ってくれる?」

 僕達は温大とは真逆の方向にある橋の下へと向かった。



あとがき

お久しぶりです。十六夜狐音です。長い間小説を更新していなかったので忘れられてしまっていても仕方ありません。実は現実世界がなかなか忙しかったために小説の更新をすることができませんでした。今回の第5話、お気づきの方もいらっしゃると思いますが5話としての完結がしていません、5話の途中まで書いたままPCを放置していたので今回は変な終わり方をしてしまっていますが、これからは最善を尽くすので応援の方よろしくお願いします。

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