第2回

スタッ


「…いるな」クンクン


「あいつの魔力を感じるぜ…」


「あの時の怨み…」


「…はらさで置くべきか!」


アオーン


ウルセェ!


ス、スンマセン!


俺「さて、帰るか」


「うう…」


俺「ん?」


「ここは…墓場はないのか…地蔵のお供えさえも…これでは霊力が…」パタン


俺「大丈夫ですか!?」


「…」


俺「ちょ、大丈…」


「…」グー


俺「…食べます?」


「はぐはぐ!!」


俺「…」


「もぐもぐ…ん!」


俺「お茶です…」


「ごくごくごく…ぷはっ!いやー助かったぜ!」


俺「…それは、何よりです」


「貴様はいいことをしたんだぜ?この狛様を助けたんだからな!」


俺「狛…さま?」


狛「あぁ!私は狛犬の狛!もっと敬意をはらうがいいぜ!!」


俺「…それじゃ」


狛「ちょ、ちょっとまった旅の方」


俺「旅人ではありません帰宅途中です」


狛「帰宅途中の方!ちょっと待て!!」


俺「なんですか…?」


狛「貴様の霊力を見込んで頼みがあるんだぜ!」


俺「間に合ってます」


狛「そこを何とか!仇を打ちたいんだぜ!!」


俺「仇?」


狛「…昔、私の大切な人…犬が帰らぬ犬となった」


俺「大切な犬ですか…」


狛「…私の狛犬としての片割れが…極悪な魔女によって…」


俺「魔女…?」


狛「知らないか!?お前ほどの霊力ならあったことが…」クンクン


俺「…ちょ、や、む、胸当たって…」


狛「…おまえ…どうして魔女の契約の魔力のニオイを」


俺(ニオイ...あのときのかぁ)


ーーー去年の夏ーーーー

 

今でもはっきり覚えている俺がバイト終えて帰宅途中の駅でのことだ


ピンポーン 残高不足ダヨ!


魔女子さん『え…あれ…なんで?』


『…ちっ』


魔女子さん『入ってるはずなのに…』ペシ


ピンポーン 残高不足ツッテンダロ!


『おい、ガキ!邪魔だ!どけよ』


『ちょ、ちょ、すみません、君、大丈夫?』


魔女子さん『へ…?』


俺『ここにいると危ないからちょっと離れようか』


魔女子さん『…でも』


俺『大丈夫、俺も一緒に離れたげるから…ね?』ニコ


魔女子さん『…』コク


俺『はい、この子が大人用のsuicaで…』


魔女子さん『…』


『ですけど…規則で…』


俺『…そうですか』チラ


魔女子さん『…』


俺『ねぇ、ちょっと、向こうにゴミ捨ててきてくれる?はい』


魔女子さん『…はい』トテトテ


俺『ありがとねー』


魔女子さん『…』チラ


俺『…は…が払いますので…はい…』


魔女子さん『…』


俺『……』ペコ


魔女子さん『…いってきました』


俺『ありがとう。駅員さんも大丈夫だって、よかったね』ニコ


俺『…』テクテクテク


魔女子さん『…』トボトボトボ


俺『ね、ねぇ、どうしてついてくるの?』クル


魔女子さん『お礼したい…です』


俺『何のことかわからいけどー、君だって行くところあったんじゃないかなー?』


魔女子さん『…』ムッ


ポツポツ


俺『ん?』


ポツポツポツ


俺『雨…』


ザーーーー!!


俺『うわ!いきなり降ってきた!』


俺『君も早く帰りなよ!じゃあね!』ダッ


魔女子さん『…』ウツムキ


俺『はー、バイト終わりでよかった…』タッタッタッ


魔女子さん『…』ウツムキ


俺『…』チラ


魔女子さん『…』ウツムキ


俺『はあー…』クル


魔女子さん『…』ウツムキ


俺『ほら、ぼーっと突っ立てるともっとびしょ濡れになるよ!』


魔女子さん『…』パッ


俺『…雨が止むまでだからね?ほら、急いで』ギュ


魔女子さん『…はい』キュ


俺『うへー、びしょびしょ』ポタポタ


魔女子さん『…寒いです』ポタポタ


俺『お風呂入っちゃうか』


魔女子さん『…え!?』


俺『そのままだと風邪ひくよ』


魔女子さん『そ、それは…そうですけど』


俺『じゃあ、ささっと入った入った』ポンポン


魔女子さん『は、はい!』トテトテ


俺『…ふぅ…ヘックシュン』


ツメタ!!…アツ!!!キャーーー!!


俺『…大丈夫か』


魔女子さん『あ、あの~…』ソロー


俺『なに?』


魔女子さん『…使い方わからないんで…一緒に入ってもらえませんか…?』


俺『…目閉じててねー』ゴシゴシ


魔女子さん『…』ギュー


俺『…痒い所ありませんかー?』ゴシゴシ


魔女子さん『だいじょぶ…です』


俺『流しますよー』ジャー


魔女子さん『…』ギュー


俺『じゃあ、あとは湯船に入ってあったまったら出てきてね、バスタオルも置いとくから』


魔女子さん『…』コク


俺『…はぁぁぁ、小さい子と風呂とか…』


俺『…まぁ、小さいといえど女性と風呂入ったってことで…人生初の異性とのお風呂が子守りとは…』


魔女子さん『…』ブクブク


魔女子さん『…決めた、あの人と契約しよう…』ザバ


魔女子さん『…あの!』


俺『ん?ちょ、バスタオルだけで…』


魔女子さん『私と契約してください!』


俺『…へ?契約?』


魔女子さん『魔女の契約です!』


俺『わかったわかった、何でもするからとりあえず服着t』


魔女子さん『!』パァァ


俺『…どうしたの?』


魔女子さん『だって、嬉しくて…契約してくれるって…』


俺『うんうんするから、早く服をね』


チュ


俺『…』チュー


魔女子さん『…』チュー



コオオオォオオォォォォォ


ブワッ


俺『…』チュー


魔女さん『…んー、ぷは』チュー


俺『え?え、え!?』


魔女さん『よろしくお願いします!♡』


ーーーーーー

ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー



狛「おーい、きいているのかぁ?」


俺「え…さ、さぁ、なんのことだか」


俺(あれから半月たつのにニオイのこってるのか)


狛「…そういうことか、まあいい、お前にあったのも運命だぜ…私と来てもらおうか!」ガッ


俺「え?」


一方その頃


魔女さん「ふんふーん」バサァ


魔女さん「うん」クンクン


魔女さん「俺さんのニオイ…♡」クンカクンカ


魔女さん「俺さんを今夜こそ…」ギュー


魔女さん「お疲れですか?俺さん♡」


魔女さん「あぁ、へとへとだよ魔女さん…君に癒されたいな…」


魔女さん「なーんてなーんて、ふひひひひひぃ♡」ブンブン


魔女さん「それに…今夜は特別ですし…ふひ♡」


カーカー


魔女さん「…遅い」ボー


魔女さん「…」



ブワ


コォォォォォォ


魔女さん「…俺さん…」


魔女さん「…もうすぐ、夜ですよ…」


魔女さん「どこいっちゃったんですか…」


魔女さん「…」ピク


魔女さん「…これは、魔力…いや、違う…霊力…」


魔女さん「この感じ…私は知ってる…」


魔女さん「…俺さんが危ない!」



魔女さん「眷属たちよ!!」


バサバサバサ


カー


魔女さん「俺さんを…」



魔女さん「私の大切な人を…草の根…ビルの根かき分けても探しなさい!!」


カーカーカー!



俺「ん…」


狛「やっと目を覚ましたぜ…」


俺「…つっ」ズキ


狛「あ、ご、ごめんな、そんな強くするつもりはなかったんだ」


俺「…ここは?」


狛「あそこで眠らせているわけにもいかなかったし、運んだんだ、どこかの公園だろ」


俺「…公園、俺、帰らないと」


狛「そいつは駄目だぜ、お前があの極悪魔女と契約したってのはニオイでわかってるんだ」


俺「…魔女さんは…あなたの大切な犬を…」


狛「…教えといたほうがいいか…」


狛「あいつは…ある日私たちの神社にやって来てな」


俺「…」


狛「いつも一人で魔法の練習をしていた」


狛「最初は小さなものだったから目をつむったが…どんどんそれは強くなっていった」


狛「そしてそれはいつしか相手が必要とするものになった」


俺「その相手って言うのが」


狛「そう…私の相棒だぜ…」


狛「最初は意気揚々と相手をしていたが」


狛「そのうち相棒も耐えられなくなってな…」


狛「狛犬は対でないと神様を守る権利がなくなっちまうんだ」


狛「あいつは新しい相棒を探すといったが…その約束も守らないまま…消えた」


サバサバサ


俺「…壊したまま…いなくなったんですか?」


狛「あいつは自業自得って言ってたぜ…」フッ


俺「…酷いな」グッ


狛「おい、まだ寝てたほうがいいぜ」


俺「でも…ずっと膝枕してもらってちゃ」


狛「お前には怨みはねぇ…あいつを釣る餌をやってもらったらすぐ開放するさ」



バサバサバサ


狛「ほらな、お出でなすったぜ」



魔女さん「その貧層な太ももを俺さんから離しなさい!!!狛!!!」



カーカーカー



魔女さん「…」キッ


狛「…」ジッ


魔女さん「…返しなさい」


狛「…その言葉、そっくりお返しするぜ」


魔女さん「…あれは」


狛「問答無用だぜ!!今宵は満月!!霊力が月のうち最も強い!!」


フサフサフサ

メキメキ


狛「行くぞ!極悪魔女!!」


魔女さん「…くっ」


俺「待って!!」


魔女さん「俺さん!」


俺「魔女さん!話を聞いたけどこれは魔女さんが悪い!!」


魔女さん「…え?」


俺「魔女さんが狛さんの相棒を壊しちゃったから狛さんは神社に戻れないんでしょ!」


魔女さん「…」


俺「これはどう考えても魔女さんが悪いよ!」


狛「おまえ…」


俺「だから…ちゃんと謝ろう?一緒に謝ったげるから」


狛「…」キュン


魔女さん「…狛から、ちゃんと話を聞いたんですか?」


俺「もちろん」


魔女さん「狛の相棒がとんでもない変態だったことも?」


俺「え?」


魔女さん「私が魔法の練習しているとき自ら当たりにきて、興奮していたことも?」


俺「…な、なにそれ」


魔女さん「終いにはもっと強くしてくれって言って満足して成仏したことも!!?」


俺「…」タラァ


魔女さん「全部聞いたんですか!!??」


俺「…」チラ


狛「まぁ、だいたいあってるぜ!」フンス


俺「あってない!全然当ってないよ!!」


狛「細かいことを気にする奴は嫌いだぜ!結局私は神社を追い出されたんだからな!!」


魔女さん「あんたには悪いけどあんたの相方は自業自得ですよ!!」


狛「その後私に新しい相方を探すと約束したじゃないか!!」


魔女さん「もちろん探しましたよ!!全部断ったじゃないですか!!」


狛「連れてきたのが猫ばっかりだったろ!四足歩行なら全部大丈夫ってわけじゃないぜ!!」


魔女さん「えり好みしすぎなんです!!」


狛「ふん!!まあいいさ!!お前がみつけてくれないならこっちにも考えがあるぜ!!」


魔女さん「なんですか!」


狛「こいつを新しい相棒にする!!」


魔女さん「え」


俺「え」


狛「さっき…私のために立ち上がってくれた時…いいなって思っちまったぜ…」ウンウン


魔女さん「だ、駄目に決まってるじゃないですか!」


狛「いいや決めたぜ!!お前しかいない!」グイ


俺「ちょ、まって、!!、力つよっ!!」


狛「一緒に、阿吽の呼吸…しような」


魔女さん「だめえええええええええぇぇぇ!!!!!」



チュ


狛「…」チュー


俺「…んー!」チュー


狛「…ぷは…ふふ、契約完了だぜ」


俺「…は、はは」


狛「さて、これでお前を…」



魔女さん「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ





狛「…」ゾクッ


狛「こ、今宵は満月だぞ!!私の力だって!」


魔女さん「どこに月が出ているの?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


狛「え、あ、曇ってる!そんなばかな!!」


魔女さん「反省は地獄でしなさい」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


狛「う、噓でしょ?そんなおっきい魔力浴びたら本当に…」


魔女さん「…」ニコ


狛「ご、ごめんなさぁぁ……」


ジュ





俺「…魔女さん、痛いっす」


魔女さん「自業自得です」


俺「今回俺悪くないですけど」


魔女さん「誰にでも優しいのも考え物です」


俺「でも俺もほうきに乗せて欲しいのですが」


魔女さん「ロープで運ぶだけでもありがたいと思ってください」ツーン


俺「…」ブランブラン


魔女さん「…まぁ、そんなところも好きになっちゃったんですけど…」


俺「…そうっすか」ブランブラン


俺「…」


俺「…あのそろそろ家に」


魔女「もうちょっとこの満月の空中散歩を堪能しましょうよ」


俺「…せめてほうきに乗せてくれませんかね」


狛「よう、待ちくたびれたぜ」


俺「へ」


魔女さん「なんであんたがアパートにいるの?」


狛「なんたって私も契約の術式をしたからな!離れたくても離れられないぜ」


魔女さん「まだあんたやられたりないようね…」ゴゴゴ


俺「ストップストップ!!今日はもうやめにしよう!!遅いし!!」


狛「そういうことだ、なあこのテレビつけていいか?」ピッ


魔女さん「ちょっと、何我が物顔で私たちの愛の巣に入って来てるんですか?」


狛「お前より私は神の使いだぜ?ご利益は私の方があるぜ?なぁ」グイ


俺「う、マシュマロ」ポニュン


魔女さん「ちょ、俺さんは渡しませんよ!!」グイ


俺「おふ、スイカ」ムニュウ


狛「グルル…」


魔女さん「キシャー…」


俺「…はぁ…ん?」


『本日東京をおびただしいカラスの群れが』


『専門家もこのような現象は極めて異例であると』


『地震の前触れだという情報も』


俺「…これ」


魔女さん「…」プイ


俺「…カラスも操れるんですね」


魔女さん「…もちろん」クス




魔女さん「魔女ですから」


狛「私は犬を使えるぜ?」


魔女さん「あなたには聞いてない!!」


俺「ちょ、ふ、二人とも落ち着いて!」



おわり

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