あなたも、去って行かれるのねでござる。

【前回までのあらすじ】

 幽冥牢彦ゆめろうひこ(診断メーカー結果によれば『山羊の姿をし、魔王と聖人の素質を半分ずつ持つ、薔薇のフレグランスのブレスを吐く猫』)は現在、親戚に部屋の保証人をお願いしているのだが、この度、あちらが引っ越される事となった。

 そろそろいい年なので、親戚同士固まって暮らす(地域範囲)のだという。現在住まわれている土地は寂れまくって、はっきり言って

『ベッドタウンなのにも程があるんじゃないですかねぇ』

というくらいのつまらなさなので、致し方ない。幽冥牢彦も一時期いたのだが、その頃からは考えられない程に寂れまくった。

『満足いくおつかいをするなら電車で出かけた方がいいのだが、一番近い街は治安が激しくアレなんです』

と表現すれば、ご想像は多少は容易になるだろうか。

 何しろ、既に診療所すらない。薬局も10年以上前に潰れた。

 老齢の方が体調を崩したら滅茶苦茶ヤバいと言えよう。そりゃ人も去るというもの。

 学校が置かれている土地なので、朝晩の賑わいはそこそこだが、人が立ち寄る様な店がないので、これ以上寂れたらそこも撤退するかもしれない。


 まあそれはそれとして、不動産屋さんにその事で手続きをし直さねばならない。書類関係はもう親戚に渡してあるので、それが戻るのを待てばいい。問題ない。




 幽冥牢彦もいつかは今の土地を去るつもりでいる。ネットの利便性がある今の時代、風景が気に入っている土地の方が、精神衛生上よろしいと考えている。

 完治のない病気(衝撃的な回復力を見せたとしても、いつ再発するか分からない『寛解』という段階しかない)なので、それなら散歩したくなる土地の方がいいだろう。

 人込みでしんどくなる身体だが、おつかいもどうせなら楽しい方がいい。

 正体は猫だからこそ、そう思うのかもしれない。


 ではまた(`・ω・´)ゞ

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