第168話 裏切りの致命傷
歩華から瑠花にチャンネルが開かれた……戦時中に動こうとしない彼女にかなり怒っていた……
「何してるのよ瑠花! アースレイン軍に西から攻撃しなさい!」
「歩華……ごめん……私……やっぱり飛田くんと戦いたくない……」
「はあ? 何言ってるの……」
「うっ……私……私……ずっと飛田くんが好きなの……やなの……嫌われたくないの……うっ……」
「ちょっと瑠花……あんたそんな事一度も言った事なかったじゃない……」
「言えなかったの……飛田くんには夢子もいるし……私なんてって諦めてたから……」
「たく……どうしてもっと早くそれを言わないのよ……だったらこんな計画始めからしなかったのに……いいわ、あんたはもう戦わなくていい、私だけで最後まで戦うから……」
歩華はそう言ってチャンネルを切った……
「ごめん……歩華……ごめん……」
その後、阿波瑠花はすぐに裕太との回線を開いた……
「阿波、どうしたんだ……」
「飛田くん……クルセイダはこの戦いから引きます……」
「お前……それでいいのか? 宇喜多と何かあったのか?」
「……飛田くん……お願い……歩華を殺さないで……歩華はこの世界にきて変になってるだけなの……本当は優しい子なの……」
「阿波……もとから俺はクラスメイトを誰も殺すつもりはないよ、戦いには勝つつもりだけどな」
「ありがとう……この戦いが終わったらクルセイダはアースレインの傘下に入ります……御武運を……」
それだけ言って阿波瑠花との回線が切れた……
瑠花……本当に早く言ってよ……あんたが飛田くんのことそんな風に思ってたならこんなことしなかったのに……なんなのよこの戦い……私馬鹿みたいじゃない……歩華は心の中で親友に渾身の文句を言っていた……
「レプセリカ女王、どう致しますか……各箇所で我が軍は劣勢です……」
「後方にいるシュタット軍を含め全軍に通達、アブラルダ平原に集結……そこでアースレイン軍と最終決戦です」
エルサフィには魔物の軍団を含めてまだ多くの戦力を有していた……数だけならアースレイン軍よりも多い……
「フィルナ様、エルサフィの全軍がアブラルダ平原に集結し始めたようですが……」
「ふむ……なぜ今更集結を……」
「さらに報告します、クルセイダ軍が戦場から離脱していったようです」
「それはなかなか理解できないな……エルサフィとクルセイダで仲違いでも起こったか……」
天才軍師でも、乙女心を全て理解することはできなかった……行動は不明であったが、フィルナは最善の指示を出す。
「こちらも全軍に通達、アブラルダ平原に集結、それとバカ君主に怒らないから僕のとこへきなさいと伝令を……」
フィルナは本当は怒るけどと小さな声で付け加えた……
アブラルダ平原に集結したエルサフィ軍は200万……対するアースレイン軍は150万であった……
「アジュラ軍が来る前に決着をつけます! ティーロンの巨神を中心に中央から切り崩しなさい!」
アースレイン軍の中央に展開するのはクリシュナの軍であった……アースレイン軍の最強軍団でも、巨大な巨神が相手では不利のように見えた……しかし、天才軍師はその動きを読んでいた……
大きな翼を広げて、中央のクリシュナ軍団の上空を白い巨竜が舞っていた……
「アルティが巨神を片付けてくれる、俺たちはその後に敵軍に突撃する!」
クリシュナはそう部下に指示を出していた……その言葉通り、アルティは悠々と歩いてくる巨神に強烈なブレスを浴びせて分解させた。
後方でそれを見ていた宇喜多歩華は言葉を失う……最強であるはずのURユニットが瞬殺……あれは一体なんなのだ……未知の力に恐怖していた……
戦力の柱であるティーロンの巨神を失ったエルサフィ軍は同様していた……そこへアースレインの全軍が襲いかかった……
「敵の動きは鈍いぞ! 一気に叩き潰せ!」
右翼からジュスラン軍団が攻め上がる……
「混乱した敵隊から攻撃しろ、敵を連携させるな!」
左翼のブライルもこの隙を逃さなかった。
「殲滅しろ……」
クリシュナは一言だけで自分の意図を部下に伝える……
そして軍師に怒られるのが嫌で、逃げ回ってるバカ君主は……
「よし、周りはクリシュナたちに任せよう、俺は宇喜多……いやレプセリカ女王と直接会って話するから敵の本陣に突撃するぞ」
「さすがはエイメルだな、面白いぞ、その作戦!」
「どこまでもご一緒いたします!」
アズキとアリューゼは無条件で裕太の案に賛成する。
「いや、ちょっとお待ちください! こちらが優勢といえど、敵の本陣に突撃するなんて……ちょっと危険じゃありませんか!」
冷静なシュナイダーだけはその作戦を懸念した。
「そうかな……いけると思うんだけど……」
「ケチなこと言うなよシュナイダー」
「そうです、エイメル様の言うことが絶対ですよ」
上位将軍である二人からもそう言われて、シュナイダーはこれ以上何も言えなくなった……最悪自分の命をかけて助ければいいかと納得させるのであった……
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