第169話 レプセリカ女王

裕太たちの軍は、本気でレプセリカ女王の本陣へと向けて進軍を開始した…


シュナイダーだけはこの状況に不安を持ち、なんとかならないかと周りを見ていた……そして上空にアースレインの誇る、竜騎士団を見つけた……


すぐに合図の光矢を放って竜騎士団に知らせる……



「どうした、シュナイダー将軍、何か早急の用件か」

やって来たのは竜騎士団の団長であるグルフィン将軍だった。


「グルフィン将軍、すまないがエイメル様に同行してもらえないか」

「エイメル様に同行するのは是非もないが……何かあったのか」

「エイメル様がこれから敵の本陣に突撃すると言っている……最悪、竜騎士団が同行していれば、いざという時、空からエイメル様を逃すこともできると思ってな」

「また無茶なことを考える……しかし、了解した、これから竜騎士団はエイメル様の護衛任務に付こう」


これで最悪の状況だけは避けられる……シュナイダーはそう安堵した。



上空からのアルティやマゴイットの猛威もあり、裕太たちは比較的楽に宇喜多歩華の本陣に接近できた。


宇喜多歩華の本陣の戦力は30万ほどで、裕太の率いる部隊は10万弱と数的には宇喜多が優位であったが、指揮と兵の質では圧倒していた。


「グルフィン! 竜騎士団で敵の魔物の軍勢を狙いうて! アイアンギガー隊は地上から竜騎士団の支援と、味方の援護を!」


宇喜多歩華は本陣にSRヒドラやSR+ギガトロールなどを配置してたが、竜騎士団の空からの攻撃と、シュナイダーの率いるアイアンギガー隊により、戦闘開始早期に排除された……


「エイメル、どうしてアルティやマゴイットを連れてこなかったんだ、その方が早いだろに」

ふと疑問に思ったのか、アズキがそう質問する。


「本陣を攻め落とすだけならそれがいいと俺も思うけどね……殺したくないんだ……レプセリカ女王を……」


「おい……エイメル……結婚式前に浮気か……確かにレプセリカ女王は美人だと聞くけど……」

「あっ……いや……そうじゃない……やっぱり、友達は殺せないよ……」


裕太がそう言うと、アズキは安心して引き下がる……そういうところが好きなんだと彼女は思っていた……



「ヒドラもギガトロールもやられた……魔物の軍勢もほとんどいなくなった……兵たちも疲弊して、劣勢にある……この戦況はひっくり返せない……」


「レプセリカ女王! ここはもう危険です! 一度撤退を……」


「いえ……ここで逃げても結果は同じです……待ちましょう……辺境の王を……」



すでに宇喜多歩華の本陣の兵力は半減していた……恐ろしいことに、裕太の率いるアースレイン軍はほとんど被害を出していなかった……それを見て宇喜多は敗北を確信していた……いや……実際は瑠花の話を聞いた時に、すでに勝利を見ていなかったのかもしれない……


「飛田くんがこれほどの力を持ってるなんて正直思わなかったわ……」


そう呟いてすぐに……裕太が姿を現した……すぐに宇喜多の前に親衛隊が躍り出る……しかし、宇喜多歩華はその親衛隊に下がるように命令した……


「宇喜多! 勝負ありだ、降参しろ!」


裕太がそう言うと、宇喜多歩華は微笑んだ……


「そうね……私の負けのようね……あなたと私の差はなんだったのかしら……知略を用意て、兵力を準備して、圧倒的有利で戦いを進めた……だけど結果はこうなった……何が足りなかったのかしら……」


「そんなの簡単だ……運だよ……俺はお前より運が良かったんだ……仲間に恵まれ、ガチャ運がよくて……そこだけだろ」


それを聞くと宇喜多歩華の動きが止まった……そしてボロボロと泣き始めた……


「うっ……う……違う……今、わかったわ……あなたと私の差を……運なんかじゃないわ……王としての器よ……飛田くん……あなたは私より王に相応しい……エルサフィはアースレインに全面降伏します……」


このレプセリカ女王の降伏は、すぐに全軍に伝えられた……

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