第165話 大反撃

鉄騎ゴーレム、アイアンギガーの姿を見た裕太とアズキは、お互いを見つめて頷きあう。アイアンギガーその無双の力で、ワグディアの獣魔団も蹴散らし、周辺の敵を一掃していく……


「よし、全軍、アイアンギガーの攻撃に合わせて軍を立て直すぞ!」

アズキはこの隙を利用して、自らの師団の立て直しを図った。


アイアンギガー隊を率いていたのはシュナイダー将軍であった、彼はアズキと王の姿を見つけ近づいた。

「王よ、よくご無事で!」

「シュナイダー、助かったよ」

「いえ、これも全て軍師殿のお考えでして……」

「やっぱりフィルナか……彼女の話をちゃんと聞いておくんだったよ……会ったら怒られるかな……」

「かなりご立腹でしたのでお会いしたらご覚悟を……」

「やだな……そうだ、後方に戻らないで、このまま前線で戦っていよ……」

「それも怒られると思いますよ……素直に後方の本陣に行かれた方が……丁度、アリューゼ上位将軍の軍が来ましたので護衛を頼みましょう」


「エイメル様、ご無事で!」

アリューゼが駆けつけてくる……それを見てアズキはあまりいい顔をしない……どうしてかアズキは今だにアリューゼをライバル視してるみたいで、今のボロボロの状態は見られたくないのだろう。

「アリューゼ、俺はこのまま敵に反撃したいと思ってる、アズキとシュナイダーと一緒に、俺ときてくれるか」


そう俺が言うと、シュナイダーが驚き、反論する。

「王よ、そのまま前線に出る気ですか、そんなことしたら軍師殿に怒られますよ」

「もう、怒られるのは確定だろうから……ちょっとでも遅らせたい!」

「変なところで子供ぽいですよね……」


アリューゼは俺の願いにこう答えた。

「この身尽きるまで、どこまでもご一緒します!」


こうして、シュナイダーのアイアンギガー隊、5000と、アズキ師団、30000、それにアリューゼ師団、50000を戦力として、俺は逃げてきた道を逆走することにした。



「どういうことだ! アースレインの援軍は来ないのでは無かったのか! レプセリカ女王め……いい加減な情報をよこしよって……」


ワグディアのデリフシュ大将軍は怒りを滲ませてそう呟いた……


「デリッフッシュ大将軍……既に軍の八割が殲滅……このままでは全滅するのも時間の問題かと……」

「くっ……逃げ道はないのか……」

「南なら、まだ敵は少ないですが……」

「では南へと行軍しろ!」

「それは友軍を見捨てると言うことですか……」

「もはやどうすることもできぬ……俺が生き残ればワグディア軍は立て直すことができる!」


南へと進みだしたデリッフッシュ大将軍の本軍であったが、間の悪いことに、エイメルの率いるフィルナに怒られたくない為にとりあえず戦う軍の進路上に飛び出していた……


「エイメル、ワグディアの本軍が飛び出してきたぞ……」


「なるほど……とりあえずアイアンギガー隊で正面から攻撃、アリューゼ、アズキの師団は側面から波状攻撃で」



アイアンギガーの攻撃力で陣形を分断されたワグディア本軍は、アリューゼとアズキに完膚なきまでに叩きのめされた……


「くっ……逃げ道は! 逃げ道はないか!」

「デリッフッシュ大将軍、もうここまでかと……」

「俺が死ねばワグディアは! ワグディア軍は……」


そう叫ぶデリッフッシュ大将軍に、赤い鎧の敵将が近づいていた……そして通りすぎるその瞬間の一太刀で、ワグディアの誇る大将軍の首が宙を舞った……


フェルナの命令通り、アースレイン軍はワグディア軍をふた時で殲滅した。



「ワグディア軍が全滅だと……」

「はい……北に現れたアースレインの援軍に敗れたようです……」

「そんなバカな……アースレイン軍の大半は、アジュラ王朝と戦争中のはずですよ……どこからそんな援軍が……」


「た……大変です! 東からアジュラ王朝軍が現れました!」

「なんですって……そう言うことか……アースレインはアジュラと休戦したのね……くっ……そんな筋書き誰が書いたの……あの飛田くんが考えられるわけないし……」

「どうしますか、レプセリカ様……」

「まだそれでもこちらの方が戦力は上です……アジュラはラグマーンに任せて、エルサフィ、クルセイダーはアースレインを殲滅します!」



アジュラ王朝軍が現れた報告は、戦況を見ていたアースレインの軍師のもとにも届いていた……


「フィルナ様、アジュラ王朝軍が現れました!」

「きたか、サフェルリダ女王……ちゃんと約束を守ってくれたみたいだね……それではラグマーン軍はアジュラ軍に任せるとしよう……アースレインはエルサフィ、クルセイダーを殲滅させる!」



アジュラ王朝の女王サフェルリダ女王は、アースレインのフィルナから休戦の申し入れがあると、すぐに休戦を受け入れた……それも全て気に入らない女狐を倒す為であった……


「さて……女狐を狩りにきたけど……まずはラグマーンを片付けないと行けないようね……アジュラ全軍に伝令! 敵は正面のラグマーン軍、七竜を前線に出して一気に殲滅しなさい!」


その命令で、アジュラ王朝軍の国宝、七つのドラゴンが大きく羽ばたきながら、空に飛び立った……



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