第164話 辺境の軍
「ワグディア軍の本隊か……」
突破に時間がかかりすぎた為に、ワグディア軍の本隊が北の逃げ道を塞ぐように行軍してきた……その兵数は60万……アズキ師団の生き残りが3万と、まさに絶望的な戦力差になっていた……
「アースレイン王はあそこにいるのだな……」
「はっ! デリフシュ大将軍、間違いありません!」
「では、あれを潰せは終わるな……全軍、あの小さな軍を包囲煙滅しろ!」
ゆっくりと動き出したワグディア軍は、裕太たちに向かって進んでいく……
「完全に囲まれてるな……」
「今の防御陣形を突撃陣形に変更して突破しますか?」
ルサスがそう聞くと、アズキは少し考えて答えた。
「完全に包囲されたこのタイミングで防御陣形を崩したら一溜まりもないない……なんとか敵の包囲を崩せないか……」
しかし、そんな方法などあるはずがなかった……突撃もできず、包囲も崩せず、ただ、守りを固めてその命を少しでも永らえるのが精一杯であった……
「ダメだ……防御陣形が崩される!」
今のこの状態での陣形の崩壊は全滅を意味する……せめてエイメルだけでもとアズキが決死の特攻を判断しようとした時……異変は起こった。
「霧だ……」
その周辺を包み込むように深い霧が出てきた……時刻は真昼でこんな深い霧が出てくるのは不自然であった……
しかし、その霧の正体をよく知っているアズキと裕太は二人で笑い合う……そして同時にこう叫んだ。
「援軍だ!」
「さて……ギリギリ間に合ったようだね……バカな君主も少しは反省しているかな……」
「フィルナさん、早くエイメル様とお姉ちゃんを……」
「うん、わかってるよ、ラスキー」
フィルナは全軍にそれぞれ伝令を伝える……
「まずは目の前に布陣するワグディア軍を殲滅する! 右翼からジュスラン軍団、左翼からブライル軍団、中央をクリシュナ軍団、アイアンギガー隊は友軍を包囲している敵軍を蹴散らせ! 空からはアルティとマゴイット、グルフィンの竜騎士団を中心に生き残った友軍の援護を! ワグディア軍はふた時で片付ける! 一斉攻撃開始!」
ワグディア軍の布陣する北に出現したのは、アースレインの軍師、フィルナ率いる150万のアースレイン軍である……その一斉攻撃は圧巻の一言であった……
ラスキーの霧により、接近に気付いた時には遅かった……得体の知れない軍の攻撃に、ワグディア軍は一瞬で混乱状態となる──
「なんだ! 何が起こった!」
「敵襲です! 北に大規模な敵が出現しました」
「北だと! そんなバカな……」
ワグディア軍はまともな反撃をすることもできず、ひと時でその兵力の半数を失っていた……アースレイン軍の爆発的な瞬間火力の最大の要因は、二つの巨大な龍が担っていた……
アルティの放ったレーザーブレスが密集したワグディア軍を焼き払う。そのひと吹きで数万のワグディア兵が消滅する──アルティと競う合うように、マゴイットも金色に輝く死の咆哮をワグディア軍に浴びせた、それを受けたワグディア兵は体が溶けるように消滅していく──白と金色の巨大な龍は、ワグディア軍にとっては厄災そのものであった……
アルティは空で戦っている友軍を見つける……かなり弱っていて、今にも墜落しそうなほど疲弊しているその姿を見て、大きな体からは想像できないほどの加速でその場へと急行した。
「リリス……よく頑張った見たいですね……」
「あ……アルティ……久しいの……」
「もう限界でしょ、ここは私に任せて下がりなさい」
「誰に言っておるのじゃ、我は夜の女王ぞ……」
アルティはリリスのプライドを傷つけたと思い、考えを改めた。
「……そうですね……まだ戦うのであれば、私の魔力を分けてあげましょう、それに体力も回復しましょう」
そう言うとアルティはリリスに青いオーラを与えた。
「……魔力が最大まで回復する……私の魔力を最大値まで回復させて……お主の魔力は減っているようには見えないの……どれだけの魔力容量を持っているのじゃ化け物が……」
「自分でも魔力の最大値がわからないのです……それより、敵がまたきますよ、私が処理しましょうか」
「余計なことじゃ、あの程度の軍、一瞬で葬ってくれようぞ」
その言葉を聞いたアルティはその場を気丈な友人に任せることにした──
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