第161話 超装備の戦闘

ランザックの装備は、裕太から授かった魔法装備に身を包まれており、かなり高い戦闘力を有していた……通常なら一騎打ちでは絶大な力を発揮するのだが……残念ながら相手はあの宇喜多歩華の上級家臣である……当然のように魔法装備をフル装備していた。


ランザックの電光石火の槍撃が、フリューゲル目掛けて打ち込まれる、フリューゲルはそれを大きな戦斧で弾き返す……


フリューゲルは、斧を盾のように構えて、ランザックにそのまま接近する──ランザックは近ずけさせなように、無数の攻撃をフリューゲルに打ち込むが、フリューゲルはそれを全て斧で受け止める。


十分に接近すると、フリューゲルは盾にしていた大きな斧を振りかぶって叩き下ろした。ランザックは右に転がり、それを回避すると、フリューゲルの低い箇所を狙って槍を振った──槍はフリューゲルの右足にあたり、派手に転倒させる。


「勝機!」

ランザックは高く跳躍して、転倒したフリューゲルの上へと飛び込む……そしてその大将軍めがけて無数の槍撃を撃ち放った。


「炎よ!」

フリューゲルが短い言葉を発すると、手に持っていた斧から激しい炎がほとばしる。ランザックはその炎に包まれた……素早く地面に転がり、燃えたマントを消化する……


「くっ! 炎の力か……」

「ふっ……このイフリートアックスの力を試せる時が来るとはな……」


通常装備なら今の炎で勝負は決していたであろう……ランザックは裕太から授かった装備の防御性能に感謝する。

「ならばこちらも見せてやろう……風よ走れ!」


無数の真空波がフリューゲル向かって放たれた……イフリートアックスを盾にして防ぐが、あまりにも真空波の数が多く、盾で隠しれない箇所が切られる……

「ぐっ……セコイ攻撃だな……皮を切るだけでは俺は倒せんぞ!」

「皮も切り続ければ肉を断ち骨を切る! 風よ走れ!」


ランザックの素早い連続攻撃に、フリューゲルは反撃の機会を見出せない……

「ふっ……では、皮はくれてやることにしよう……」

フリューゲルは真空波が襲いかかる中、ランザックめがけて走り始めた──身体中を切られて血がほとばしるが、気にせず接近する。

「肉までは届かなかったようだな!」

ランザックの目の前にまできたフリューゲルはイフリートアックスを大きく振りかぶった。


「隙だらけだ! 風よ貫け!」

風の力に包まれた槍先が、凄まじい速さでフリューゲルの胸元を強打する……並みの鎧なら貫いたが、フリューゲルの鎧もまた強力な魔法装備であった……その強力な攻撃を弾き返した──しかし、鎧もその一撃を跳ね返すのが精一杯だったようで、ボロボロと崩れるように破壊した……


「ぐふっ……そんな強力な一撃が……」

「もう、貴様を守る鎧はないぞ、次の一撃で終わりだ! 風よ貫け!」

そうランザックが叫んだ瞬間、ランザックの胸から血が吹き出すように飛び散った……


「なっ!」

それは背後からの槍の一撃であった……


一騎打ち中に、ランザックを背後から槍で攻撃したのはフリューゲルの懐刀でバルダガと呼ばれる将軍であった……彼の持つ武器も強力な魔法装備である……

「槍の素振りをしていたら当たってしまった……申し訳ない」

バルダガは無表情でランザックにそう伝える……


「ぐはっ……くっ……卑怯な……」

血を吐きながらそう訴えるが……バルダガは眉ひとつ動かさなかった。


「余計な真似を……」

フリューゲルはそう言いながらも斧を構えてランザックに近づく……そして血を吐き朦朧としている上位将軍の頭にその斧を振り下ろした。


一騎打ちを見守っていたランザックの部下たちはそれを見て当然のごとく激怒する……上官の仇を討つべく、フリューゲルに殺到しようとした。


「皆殺しにしろ……」

その短い命令はすぐに実行された……絶対多数であるエルサフィ軍は、ランザック師団の生き残りを包囲すると、全方位から無情な攻撃を撃ち放った……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る